toshimichanの日記

ブログの保管所

2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ゴミ箱 4

ねぇあなた。 あなたがくれる物なら形のない物がいいな。 落としてしまったり、間違って壊わしてしまったり、何処かに置き忘れたり、ついうっかりして失くしたり、形のある物はそんな風に私の手元からいつか必ずその姿ではいなくなるから。いつまでも、私の…

銀杏並木

246の青山通りから、神宮絵画館に至るまでの銀杏並木は、新緑が芽吹く初春の頃には、若々しく穢れのない淡い新緑を、その大樹の枝々に讃え、木々の逞しい生命力と移ろう季節の息吹きを感じさせてくれる。 寝静まる事のない都内のど真ん中で、やっと僅かば…

ゴミ箱 3

腕に刺さっている針から伸びるチューブを辿れば、そこには、「透明になる薬」と書かれた点滴が吊り下げられていた。あぁそう言えば、確かに針の刺してある左腕だけが心なしか薄くなって来ている様に見える。「そうか、私はこうして段々と影を薄くしながら透…

生ごみ

そう言えば、いつの間にかセミの鳴き声が聞こえなくなっている。 晴天の真っ昼間だと言うのに日向を歩いていても、辛い暑さは感じなくなっている。 そよと吹く柔らかな風の中に金木犀の囁き掛ける様な優しい甘い薫りが運ばれてくる。 「今年の夏も、やっぱり…

ゴミ箱 2

俺はその瞬間だけ耳を塞いでいたんだ。 読唇術なんて高等な技などの心得など俺は持ち合わせていやしない。 それなのに、はっきりとした決意の籠った君の声が鮮明に直接俺の中に届けられてしまったんだ。 その言葉を聞きたくはなくて、その言葉を発する君の唇…

ゴミ箱 1

止めどなく溢れ出す、熱く切ない感情を俺はいったいどんな風に君に伝えたらいいのだろうか。この耐え切れない、心を震わせる朱く熱い気持ち言葉などにできやしない。口から出せるどんな言葉を駆使しても、全てが嘘になってしまう。これを言い露せる表現なん…

あれ?

あれ?何でだろう。刈り払われた夏草がまだ衰えを知らない強い陽射しに照らされてむっとする青臭い草いきれを放っている。何でだろう、腰掛けた俺をふわりと包み込み妙な郷愁を誘い出す。南風が運んで来るどこか遠い遠い彼方から耳を撫でる様に聞こえてくる…

泥酔

酔った君が大好きだった。特に泥酔してどエロ全開の淫らな君が凄く愛おしかったんだ。普段の二人っ切りの時間には健康的なエロっぽさを見せてくれてはいるけれど本当の君は心の奥底に秘めている真の欲情は表には出さないで隠しているよね。日頃は恥ずかしが…

いってらっしゃい。

「いってらっしゃい。」 軽く唇を合わせ、肩に手を置いて、彼女のサラリとした黒髪を手の甲に感じて。 そう、いつもの朝の出勤時の様にこのドアを閉じて。たった今、彼女が閉じたドアを見詰め俺はもう一度、何かを確かめる様に、小声で「いってらっしゃい。…

Twitter

スランプと呼ぶには長すぎる月日が経過してしまった。こんな筈ではなかったと、悔やみもがいていた日々も遠い記憶として置き去りにしてしまっている。まだ最悪ではないと、自分に言い聞かせ、必死に己を押し並べさせている。とあるスーパーのエレベーターの…

甘党

元町の商店街を手を繋いで歩いていたら、ふいに、繋いでいる手をぎゅっと握り締めて、彼女が僕を見詰めて言ったんだ。「シュークリームの様な幸せ。」 突然に何を語り出したのかと思いきや、二人で歩いている、その直ぐ横には、お洒落なカフェのウィンドウが…

身も蓋も

俺はいったい何時頃からこのみっともない仮面を被ってしまっていたのだろうか。 俺は何処を隠して、何を表面に露(だ)してここに居るのだろう。 己れの本性を隠してただひたすら綺麗事やウソを書き並べて、本心の汚さをひた隠しにして良い人を印象着けようと…

我が家の猫

まだ13年くらいしか経っていないのかな?我が家には二匹の猫がいる。息子がまだ小学校の低学年、娘は中学生だった頃に、動物病院の里親の会に参加して貰って来た猫である。 奴らは、産まれてから3~4ヶ月経っていたらしく、狭いケージの中で兄弟6匹で元…

スカート捲り

小学生の頃にスカートめくりと言う遊び?が流行っていた。 学校にスカートを履いて来た女子のスカートを捲り、パンツを見ると言う実に単純で愚劣な遊びだった。 友達同士でさえあだ名で呼んではいけないと言う現代では、そんなスカートを捲るなどと言うハレ…

蜻蛉

幼い頃の俺は、 視界を横切るトンボの勇姿に 心を弾ませ 夢中になって追い掛けていた。 捕まえる網も持たずに、 走ったくらいの速度では 追い付けもしないくせに、 トンボには 俺が夢中になるだけの なにかの 魅力を感じていたんだ。 四枚の透明な翼を広げて…