ポロンと引っ張り出されて、この季節の冷たい風に曝されて、ちょっと冷えてしまった強張りが柔らかく暖かい温もりに包まれる。
半分しか姿を見せていない月が真上にある、真夜中過ぎの公園のベンチの端に座った俺は、夜空を仰ぎ視ながら太股の上にある黒髪を優しく撫でていた。
ゆっくりと丹念に包み込まれて行く暖かな柔らかさを感じながら、俺は星の数を数え始める。
黒い空に対してやや明るさを帯びた雲が、所々に鎮座して曖昧な形を披露してくれていた。
頬を撫でる風はそこそこ冷たいのに、雲は流れもせずに、同じ場所に留まったままで余り形を変えずに浮かんでいるのが見えているのが不思議だった。
彼女の頭がゆらゆらと動くのと同時にシンクロして、揺さぶられる堪らない思いが込み上げて来る。
何時もの事ながら、なんでこんなに上手なんだろうか。
生かさず殺さずのギリギリのラインを保ちつつ、俺の揺らぎを見事にコントロールして、導かずに激しさを与えてくれるなんて。
一等星を雲が隠そうと迫って来ている様に見える夜空のパノラマ映像も、そろそろ俺の気を逸らすだけの物語は見せられなくなって来ている。
根元付近まで頬張られ、グイグイとした吸引が堪らなく気持ち良くて、月に向かってつい白い息を吐き出してしまった。
ヤバい、少し喘ぎ声が混じってしまったのかも知れない。
それを聞き逃さなかった彼女は、ここぞとばかりの仕上げ技を仕掛けて来てしまった。
星の数はまだ数え切れてはいなかった。
雲の形も、何の形なのかに例えられてはいない、この状況で俺は彼女の必殺技を仕掛けられてしまうのか。
もう少し、この温かさを強張りに感じていたいのに。
情け容赦なく締め付けられながらの、激しい先っぽ吸引と裏側に擦り付けられる柔固い滑らかな上下動が俺の情けない喘ぎと共に終わりを告げる。
脈動の動きに合わせて吸い上げられる刹那。
名残り惜しそうに前歯で固定されたマシュマロはぺシャンと潰され、舌先が鈴の隙間をほじくり返して最後の一滴さえも捉え様としている。
ゴクリ。
妙に生々しく飲み下す喉の音が、俺を見上げる笑顔の向こう側で響き、彼女の唾液に濡らされた情けないしぼみは、また再び冷たい夜風に曝されてより一層に小さく縮こまるのだった。