本気なのかと尋ねられれば、
決して本気ではなかった。
それじゃ、浮わついた気持ちで付き合っていたのかと聞かれたら、
全部が全部、浮わついてたとも思えない。
まぁ、確かにデートなんてもんは遊びなんだから、楽しく過ごすに越した事はないわけで。
セックスにしたって、そこに求める快楽ってのは、それがある種の主目的な部分な分けだし、そこにお互いの繋がりの主軸をそこに置かなければ付き合っている上でのリスクに対する価値と見合わなくなってしまう。
それがメインの愛情表現であり、不倫の不倫たる所以でもあった。
だからこそ、彼女から求められる性癖に対しても真摯に向き合って、出来るだけそこに満足を与えて上げようとしていたし、無理なんかもしてそれに応じていた。
彼女が俺を欲しいと思った日々の疼きをどんどんと蓄積させてしまって、
久し振りに会った時に解放される爆発は、彼女の真の本性であり、
それを余す事なく完全に放出させて上げられるからこそ彼女に取って俺の真価だった。
彼女にしてみれば、それは誰でも良かった分けではなくて、この俺だからこその解放感で、相手が俺だったから剥き出しに出来た性癖だったんだと彼女は納得していた。
そんな所に道徳心や罪の意識など存在はしなかった。
言わば、他人の体に対して通常では考えられない様な暴行を加える。
されたい。して欲しい。と、
求められるからこその性的な暴力。
それは、痛みではなく快楽であり、彼女の内に秘めていた本性だった。
そこで俺に求めていたのは、犯罪とも言える様な残虐な行為だったとしても、
それが、彼女が俺に求める、
俺にしか求めなかった、
俺にだけに現した性癖だったらしい。
それは、彼女に取っては掛け替えのない相手。
俺にして見れば、完全なる非現実性の逃避だったのだと思う。
そんな関係性に於いて、
幸せにするからね。
なんて、格好いい決め台詞なんか口が裂けても言えやしなかった。
将来は愚か、週単位で約束が出来ない様な不安定な間柄だから、約束事の不履行なんてのはしょっちゅうあった。
それは、単純に不倫と言う立場の優先順位の低さを露呈させてしまってはいたが、
だからと言って、そんなにもそんざいに扱っていたわけではないとはっきりと言い切れるんだ。
逆に不倫相手だからこそ、その付き合いの一寸先にすら約束が結べない、不安定で不確実な相手だからこそ、一瞬の刹那を求め重ねなければならなかったのかも知れない。
その不安をいだいたままで付き合いの日々を重ね続けていた結果が、結局は七年間と言う時間になってしまったんだろうと思うんだ。