toshimichanの日記

ブログの保管所

駄文、酷暑

あの日も、こんな死にそうなくらいにドチャクソ暑い夏の休日だった。
寂れた漁村の海岸通りをかげろうに揺れる逃げ水を追い掛けながら、4人でふらふらと歩き続けてた。
こんな暑い日には海水浴がしたかったけど、時期的にまだ海開きはしていなくて、しかたなく、
ただなんとなく海辺で遊ぼうよ。
って、意見に一致してワンボックス一台に2カップル4人が乗り込んでこの小さな漁村にたどり着いた。
けど、決して有名な観光地などではないこの寂れた漁村には、海辺近くの都合の良い場所に駐車場などはなく、結果的には海から遠く離れた、民家の密集しているコインパーキングに車を停めて永遠と海まで歩くはめになってしまったのだった。

季節は初夏。
時は既にお昼を少し回った時刻。
朝方の天気予報では、時期外れの酷暑日で35度を超えるであろう予報が出され、屋外での運動や労働には注意が必要だと言っていた。


そんな中を、もうかれこれ30分は歩いただろうか。

海辺の道路にまでは出たものの、漁船の繋いである港ばかりで、それが途切れると険しい岩場になってしまって、一向に水遊びができるような砂浜は現れなかった。



エアコンが効いていた車内にいた時には、都会的なフルメイクが艶やかで綺麗に整っていた美紗絵のメイクが吹き出す汗に流され、それをタオルで無造作に拭いてしまっているのでかなりヤバい色彩になってしまっていた。



昴の彼女はと言えば、確かに目鼻立ちは可愛らしくて愛嬌のある明るい性格をしていて、とても魅力的な女性ではあるのだが、
事、その体形はと言えば、チャーミングではあるものの体の凹凸が少く、ダボッとしたワンピースの上に厚みのあるニットを着ているせいもあって、全体的な雰囲気からは、女としての艶かしさは微塵も感じられなくて俺はちょっと残念な気がしていた。

比べてしまうのは、決して良いごとではないのだけれど俺の彼女と言ったら、
スラッと高身長で、モデル体形と言うよりもアメリカンなナイスボディーをしていて、
GだかHカップの巨乳をフワリとした薄生地のブラでユルリと包み込んだだけの生乳感が漂ってしまっている。
そこへ、薄いサテン的な生地のトップスがペタりと張り付いているものだから、おっぱいの形や大きさ、その体形までもがほぼ裸体のラインを露にしているのも同然に見えてしまっていた。

まぁ確かに、海辺に遊びに来たのだから、水着姿のそのままでは流石に、田舎町の海辺の道路上では浮いてしまうのだろうけど、リアルにプロポーションが分かる程度の薄着であるのは仕方のないファッションなのだろうとも思った。



一気に今飲み干したスポドリが全部汗となってトップスの裾から零れ落ちてペディキュアを濡らしている。

薄手の生地のトップスがピッタリと肌に張り付き、彼女の見事な体形がハッキリと浮き彫りにされていた。




確かに、俺の自慢の彼女ではあるのだが、例え学生時代からの長年の親友とは言え、本当はこんな奴に、こんな見事な美紗絵の曲線美を披露などしたくはなかったのも事実。


ぴったりとしたタイトなスカートには、くっきりと浮き彫りになっているパンティーライン。
そこから伸びる、まるで作り物のようにスラリと伸びた綺麗な脚に霧吹きで噴き掛けたような細かな水滴の汗が雫を結んで流れ落ちて行く艶かしさ。


ゴクリ。
生唾を飲み込む音が隣を歩いていた昴の喉元から聞こえて来る。
昴の視線の先には、明らかに美紗絵の胸が、その歩調に合わせて揺れ動いてた。

まぁ確かに、しずかちゃんのファッションセンスやその人柄が示す雰囲気からは、美紗絵とは全く違った人種感が漂ってしまっている。

しかも、この酷暑の中、日影のない焼け付いたアスファルトを日傘も刺さずにトボトボと歩き続けているので、美紗絵の美意識レベルが低下して歩き方にアンニュイとした色気が漂っているようだった。


「昔から思ってたんだけどさ、なんでお前は、あんなスゲェ女と付き合っていられるのさ。
世の中には間違いってのは、いつでもどこにでもあるから、お前が大きな間違いを犯して、あんな美女とお知り合いになる可能性までは否定はしないよ。
でも、間違いは間違いなんだ。
例え知り合いになったとしても、その時点で大変な間違いなんだから、間違いは正されなければならないんだよな。
それなのになんだ。
常識がどんだけネジ曲がったら、
どれだけのお金を積んだら、
どんな黒魔術とか悪霊を憑依させたら、あんな美女とお付き合いができる様になるんだよ。
だいたい、お前だぜ。
こんなお前にあんな美女なんだぜ。
世界の七不思議だよ。」

そのセリフの嫌みったらしさと言ったら、あのジャイアンのび太に向かって吐く言葉そのものだった。

「もう何度も言ってるけどさ、選んだのは俺じゃないんだぜ。

いや実際問題、俺自身も何故こんなにも完璧な二物を与えられた女性と付き合えている事は奇跡としか言いようがないんだよな。
確かに不釣り合いこの上のないのは自覚してたんだ。

だけどなぁ、昴、
あんな娘が、真正面で背筋を正した姿勢できっちっりと視線を合わせたまま『私と付き合って貰えますか。』なんて言われたら、いったい何処の誰が、それを断れるんだよ。
男だったら断れはしないだろ。
あの目力の前では、どんな事を言われたとしても従うしか道はないだろ。

だって、あんな絶世の美女が目の前にいるんだぜ、それだけで舞い上がって思考回路が停止してるのに、そこに『付き合って』なんて言われたら、百万ボルトの電流を流されも同然たぜ。
一瞬、目から火花が飛び散っかと思ったら
いつの間にか真っ黒焦げにされちまってたよ。
もしかしたら、黒魔術を掛けられたのは俺の方なのかもな。」

「自分の彼女を取っ捕まえて、人前で堂々と絶世の美女って、言い放つか?ふつー
まぁ確かに、美紗絵ちゃんは見方に依っては魔法が使えそうにも見えるわな。」



「いや、美紗絵は真面目って言うか情熱的な猪突猛進形だから自分で心に誓った事は絶対に曲げないし妥協はしないんだ。

そんな意思の硬い美紗絵の心中に俺は捕らえられてしまっているんだ。
俺のしたい事や望む事は、なんとしても叶えてくれようと努力をしてくれるし、自分で出来る事だったらなんだってしてくれる。
俺が支配して、何でも自由に従わせているかの様に思えるけど、
でも、その実際の行動としての主従関係とは裏腹に、気持ち的な心の立場での上下関係は、完璧に俺の方が魂を支配されてしまって、自分の意思とは思えない命令をさせられている感が否めないんだ。

俺が、あれだけ完璧な女性を言いなりにさせられるって立場にいるなんて事は心身共に耐えられる分けがないんだよ。

人は、人として生まれた瞬間に、神に与えられた立場や人としての価値、生き方や階級ってのが決められていて、そのヒエラルキーは生きている限りは決して変えられはしない運命として決められてしまってる。

そう言った意味で考えると美紗絵の地位ってのは、決して低い位置にはいないはずなんだ。
それに比べて俺は、うじゃうじゃと蠢きながら最下層のごみ溜めにいる虫けら階級だから、本当はこんな関係をいつまでも続けてはいけないんだ。


同棲をして3年になるけど、俺は未だに彼女の真意が掴めずに、彼女の態度が信じられずにいるんだ。
だって、こんな男があの美女にやりたい事をやりたい放題にしても何も拒まないんだぜ。
無理を言ったとしても、何でも言う事を聞くんだぜ。
あり得ないだろ。

俺が変な命令や無理強いをしたとしても、彼女は一生懸命になってそれを成し遂げようとするから、俺も、いったい何処まで、どんな事まで彼女が従うんだろうと試したりもしてしまうんだ。

それは、彼女が度々口にしている『愛してる』と言う言葉の真意を突き止めたいからなのか、
それとも、逆に彼女に愛される資格のない男のひねくれた惨めさ故のひがみなのかな?
被害妄想癖からくる、ある種の自虐行為的な意地悪なのかな?
虐める事で俺に愛想を着かせて、離れて行く事を俺が何処かで望んでいるのかも知れない。

何時まで経っても、どんなに尽くされていると実感していても、毎日が信じ難い夢の中で暮らしている様な、
と言うよりも、逆に現実に起きている悪夢の様にさえ感じる事があるんだ。

身の丈に合わない彼女を相手に恋愛なんか始めちゃったからさ、そこに人生の運気を全部持って行かれてしまって、もしかしたらこの先の人生が想像を絶する悲惨な運命に見舞われる気がして、変な絶望感で堕ち込むんだけど、
美紗絵は、そんな俺の気持ちの凹凸をちゃんと察してくれて絶妙に寄り添ってくるんだ。」


「それに比べて、俺は自分の彼女には何一つ窮屈に感じる部分は見当たらないな。
そりゃ、こうやって美紗絵ちゃんと並べて歩かせたら体型は見劣りはするし、雰囲気や華やかさは到底敵わないけど、
俺の彼女としての資質には文句の着けようがないってくらいに完璧な彼女だな。

そりゃ、色気は見ての通りでムラムラさせてしまうようなフェロモンは出してないし、歩いていても揺れ動くようなおっぱいも持ち合わせてはいないけど、
いざとなれば、する事はしっかりとしてくれるし、あれはヤダ、これはしたくないって拒んだりもしなくて、俺としては相性は抜群にいいと思ってる。」



やるだけやり捲ってもう何にも出ないってまで疲れ果てた後に、美紗絵の腕にぎゅーっと抱かれてるとさ、
このまま死んじゃってもいいかなって、思う瞬間があるんだけど、
その時の俺は、全てを諦める覚悟をしちゃってるんだよな。

美紗絵の存在が自分に取って余りにもデカ過ぎて大切を通り越して自分の存在意義が押し潰されているのを自覚してしまうんだ。」


「自分の身の丈にみあう女なんてのは、この世には存在しないさ。
そもそも自分をちゃんと確率させていなければ、自分の身の丈を測る術を持ち合わせてはいないものだし、
況してや、他人である女の外見はともかくとして、内に秘めている身の丈を思ん計るなんて誰にだって出来っこないのさ。
つまりは、自分の感性がいい女なんだと感じたら、自分の感性を信じて付き合ってみるしかないんじゃないのかな?
そこから月日を重ねながら、身体と心を擦り合わせて徐々にお互いの相性の答え合わせをしなければ、身の丈を見れる鏡は手に入らないんだろうな。」



焼け着く路面の上をよろよろと歩きながら、茹で上がった思考回路で彼女談義に花を咲かせている内に、
岩場ではあるが、波打ち際の比較的平らな場所が見付かったのだった。






そう、ただ書きたかっただけなんです。