toshimichanの日記

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昔の趣味

24色のパステルで
そろそろ
草影で鳴き出した
虫の音色を背景に
夏の夜空の
朧気な月を描こうと
思いたった。


やっと熱気が鎮まり
刺々しさが失せた
草間を抜ける涼風を
感じながら
開いた白紙に
感じるがままの色を
走らせていた。

「絶好に邪魔はしないから」
と言って、
付いて来てしまった彼女。

大人しく黙ったままで
暫くは傍らで座っていられたのに、



スケッチブックの留め金を
鮮やかなネイルの爪先が
一つ一つを
数えるようになぞっては
紙面を走るパステルの色彩を
惑わせてくる。

何も言わず
黙ったままで寄り添って
指先だけが
饒舌に語り掛けて来る。

夜空の元で
絵描きの描く月夜には
心を乱された男の
淡く朧気な三日月が
描きかけの途中で
乱されて行く。

甘く柔らかな女の匂いが
しっとりとした
湿度を含んだ夜風に絡まりながら
鼻腔をくすぐる。

目にしている光景に
邪念の色彩が交じり
暖色系のパステルでは
表現のしようのない感情が
心に沸き上がってしまう。

「邪魔はしてないよ」
練り出したばかりの
真紅の絵の具の様なルージュが
ぼんやりとした月明かりに照らされて
素知らぬ横顔でとぼけてる。


心静かに
この夏の夜空を描こうと
昔の趣味を持ち出してはみたものの
今は、
あの頃には知り得なかった
美しい邪魔者が
俺のスケッチブックいっぱいに
余白を残さず
描かれてしまっていた。





ごめんなさい、ごめんなさい。
なにこれ?
余りの酷暑に脳ミソの発酵が乱れてるんだ。
麹?乳酸菌?きっと悪玉菌のせいだよ。
あっそうだ!
よく冷えた納豆を食べよっと。