toshimichanの日記

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甘党

元町の商店街を手を繋いで歩いていたら、
ふいに、繋いでいる手をぎゅっと握り締めて、彼女が僕を見詰めて言ったんだ。
「シュークリームの様な幸せ。」

突然に何を語り出したのかと思いきや、二人で歩いている、その直ぐ横には、お洒落なカフェのウィンドウが。
店の中のディスプレイに飾られていたのは、色とりどりに並べられたスイーツだった。
その中で一際目を引いたのが、真っ白でふわふわなフロストシュガーが掛かった大きなシュークリームだったんだ。

なぁーんだ、そう言う事か。
「いいや、僕はおはぎの様な幸せだよ。」

道の対面には、立派な店構えをした由緒正しき佇まいの老舗風和菓子屋さんが目に付いていた。


別にこれと言った目的もなく、ただぶらぶらと散策をしながら歩いていた元町の商店街。
二人で同じ景色の中で同じ時間を過ごしているだけで、それが二人の思い出になり、歴史として刻まれて行くんだ。
特に大きなイベントなんかなくたって良いんだ。
お腹が空いたら、何を食べようかと二人で話し合い、意見が食い違ったとしても、どちらかの熱量の高い方の食事を優先させる。
その気持ちの譲り合いや分かち合いの機微をお互いの心が感じ取れる。
この二人で過ごしている時間に分かり合い溶け合える関係性を徐々に深められるんだ。
そんな何でもない時間の繰り返しで積み上がって行く信頼にも似た「愛。」なのだろうと思うんだ。

何でもない日常を共有しながら時間を重ねて、月日となり年月となる。
人それぞれの好みの味覚が違う様に、好きを感じ取る幸せの甘さの種類だって違っていて良いんだ。
好きな甘さがクリームでもあんこでも、食べた時に美味しいと感じられれば、そこには妥協ではない、共有している幸福感があるはずなんだ。

例えば、シュークリームを食べて「美味しいね。」と喜ぶ彼女の笑顔に喜べる僕がいて。
そこには、おはぎを食べられなかった僕の悔しさなどは微塵もないんだ。
決して犠牲になったのではなく、彼女の嬉しさに触れられた幸福感がおはぎよりも美味しいんだ。


嫌な事や不幸なんて物は黙っていても、向こうからひっきりなしに押し寄せて来やがる。

だけど嬉しい事や幸福感は、足元にひっそりと息を潜めて落ちている物なんだ。
一歩一歩を確実に歩みを踏みしめながら、見逃さない様に足元に気を配って、一つ一つ広い集めて味合わなければ、幸せでお腹を膨らませる事なんてできないんだ。






なんちゃって。