toshimichanの日記

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ゴミ箱 2

俺はその瞬間だけ
耳を塞いでいたんだ。

読唇術なんて
高等な技などの心得など
俺は持ち合わせていやしない。

それなのに、
はっきりとした
決意の籠った君の声が
鮮明に
直接俺の中に
届けられてしまったんだ。

その言葉を聞きたくはなくて、
その言葉を発する君の唇を
見たくはなくて、
目を伏せて、
両手で耳を塞いで、
必死に君の笑顔を想像して
心を抑え着けていたはずなのに、


ザクザクと鼓膜に擦り着けられる
動揺を現す血流のざわめきで
それ以外は
聞こえているはずの
全ての雑音が
遮断されていたはずなのに

君の声は、
俺の両手を引き剥がし、
俺の鼓膜を強引にこじ開けて、
直接
この胸のど真ん中めがけ
木杭を撃ち込むかの様に
叩き込んで来たんだ。

その言葉は多分、
君が今、
俺に伝えなければならない
洗練され抜いた
的確に君の気持ちを
言い表した言葉。

その言葉は多分、
俺が今、
君の口から吐き出される
最悪で一番残酷な凶器だった。