toshimichanの日記

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オナホ

イケない事はあっても勃たない事はなかった。

一度彼女の口の中に含まれてしまえば、俺は瞬く間に強張り元気に猛る事が出来たんだ。

勃ってしまえば、彼女は自由に股がり思うがままに自身の中に埋め込み、その使い途を楽しんでいた。

朝に晩に、勿論夜のベッドの中でも。


その切っ掛けと状況が整っている時ならば、何時でも自由気ままに勃たされていた俺は彼女の口へ、膣へと頻繁に排出していた。

そんな日常だったので、俺から彼女を求める事はほとんどなかったんだ。




セックス依存症



確か、そんな名前の付いた症状があると聞いた事があったけど、
俺は彼女にいつ求められても、何度も求められても、嫌じゃなかったし辛くもなかったし、応えて上げたかったんだ。
だって、愛していたんだから望まれれば、精一杯の愛情で彼女との繋がりを大切にしたかったから。


それはまるで、一つの体になろうと試行錯誤するかの様な求められ方でもあった。

それは決して、性欲だけを解消するための交わりだけじゃなかったし、
結びあった体は無理の無い自然体として、俺の体は常に彼女の体の中で勃ていたんだ。

そうしている時の彼女は、本気で俺を胎内に取り込もうとしてくれていたし、
確実に俺を欲しがってくれていた。

その夢中になってくれている姿には、躊躇もなければ恥ずかしさや遠慮もなく、ただひたすら彼女は己の胎内が命ずるがままに、俺の内側から涌き出る彼女への情感を欲するかの様に、求めて来たんだ



休みの日ともなれば、朝から夜中まで出来る限り中に入れている様にしていたし、勃て続けていられない時にはクンニをして上げていた。
常に彼女の性器には俺の体の何処かを入れていたし、触れている様にして上げていたんだ。

彼女は常時、性的な刺激に溺れていたがっていたんだ。

それは生理中であろうと、血だらけになりながら、その腹痛に悩まされている日ですら、多少の腹痛くらいならば、躊躇う事なくセックスをしたし、触り続けていたんだ。

もちろん、血液臭がしている中で血だらけになりながらセックスもしていたし、経血を避けながらクンニもしていたんだ。

腹痛に勝る欲望が彼女を突き動かしていたんだと思う。




淫乱。


などと言う言葉で、自分が愛している彼女の事を表現なんて、絶対にしたくはないのだが、
確かに常軌を逸している性欲なのは事実なのは認めざるを得なかった。

かと言って、人目をはばからずに求めて来る様な事は絶対になかったし、
寧ろ、
同じ社内で働いているにも関わらず、社内の廊下ですれ違ったとしても、儀礼的な挨拶を交わすだけで、俺達二人が一緒に暮らしている事を知っている社員は一人もいなかった。

一緒に買い物等に出掛けたとしても、手も繋がないし、ベタベタとくっついて歩く様な事もしなかった。

しかし一歩、マンションのドアに入れば、突然に豹変して、俺の手を股間に導いたり、激しいキスを浴びせて来たりするのだった。


そんな状態で半年も過ぎる頃には、マンネリ化が始まり、繋がり方や責め方に工夫をしなければ彼女を簡単には絶頂まで誘う事が難しくなり始めたのだった。


時には彼女の体を乱暴に扱って、性的暴行とも思える様な酷い扱いをしたりして、違った方向からの刺激で日常に変化を与えたりし始めてしまったのだった。

それが、彼女の際限のない性欲を処理するに当たってかなりの有効性があるのだとお互いが気付いてしまったんだ。

それからと言うものは、坂道を転げ落ちて行くかの如く、行いは過激さを増していき、彼女の求める刺激も過激さを増して際限のない高みを望み出してしまったのだった。


一旦、満足をする。
と言う区切りの垣根がなくなり、イッている最中でも刺激を継続したままで、繰り返しイキ続ける底無しの快楽を知ってしまい。

更には、痛め付けられ敏感にさせられた後の快楽の方がより高い頂点に辿り着ける事を知ってしまったんだ。



そして、痛みそのものが快感になり、痛みだけでイケる様になった。
その頃には、彼女が俺のモノを好き勝手に使わなくなっていて、
俺は、痛め付けて脱け殻の様になった彼女の身体をオナホの様に扱う様になったんだ。

あゆみ

その人の名は、



俺は、25年振りに再会した昔の恋人の姿を見て、
一瞬でも「汚い」と思ってしまったんだ。

そんな俺を、ずっと俺自身が許せずにいるんだ。

俺の知らなかった、この30年間の空白の年月にあゆみがどれ程の苦難を乗り越えて、どれだけの辛さを味わって来たのかを考えもせずに、自分の自堕落な安穏とした生活感があゆみの苦労が滲んでいる姿を見て、汚いと思ってしまったんだ。

結婚相手を見誤って、僅か数ヶ月で離婚をして、
そして、生死をさ迷う様な大病に掛かり、何度かの手術を重ねて、再会した時点で生きているのが奇跡なんだと医者に言われたんだよ。と、笑いながら話していたあゆみだったんだ。

その辛い離婚や苦しい闘病生活を支えてくれていたのは、高校時代に経験した恋愛だったんだと真顔で俺には向かって話してくれたんだ。

そんなあゆみを、一度でも「汚い」と思ってしまった自分が、
人として生きていてはいけない最低なグズ人間なんだと痛感した。

そんな純粋な気持ちで俺と向き合ってくれているあゆみの顔をまともに見る勇気が持てなくなってしまった。

こんな俺があゆみに取って唯一の支えになっていたなんて。

それを俺は、、、
喜んで良いんだろうか?
それとも、執着心?執念?
そこに怨み辛みの感情がなくて、単純に別れてしまった後悔の念だけの悔しさだったのならば、それは俺も同調すべきなのだろうか。
嬉しさや感激は何処かに感じてはいるものの、その長年抱いて来て貰っていた気持ちを俺は素直に真っ直ぐに受け取る事が出来なかった。


確かに、思い起こせば綺麗な思い出しか記憶に残っていないあゆみとの青春時代の付き合いには、遠くて懐かしくて楽しかった思い出しか残っていなかったけど、、、


そんなひた向きな純愛を胸に生きて来た、昔の彼女を、俺は、汚いと思ってしまったんだ。
そんなあゆみに対して、面と向かって「老けたよね。」と、臆面もなく言ってしまったんだ。


その後は、あゆみを汚いと思ってしまった贖罪の意味を含め、出来る限りの感謝を惜しまずに、あゆみが望んだ通りの関係を結んだんだ。



それから暫くは、冥土の土産になんて冗談の様に言いながら、あゆみとは何度か関係を繰り返していたんだ。


忘れていたあゆみとの思い出、記憶が彼女の昔話や二人の記念品?などで所々だが呼び起こす事が出来たし、
体を重ねれば、懐かしいあゆみ特有の体の匂いがあの頃を如実に思い出させてくれるのだった。

セックス中にする仕草や癖が鮮明に呼び起こされて、
あぁ、この彼女は、あゆみなんだなってついつい嬉しくなったりもしてたんだ。


しかし、あゆみも大病や苦労をしながら長い年月を重ねて生きて来た様に、俺もまた、それなりの苦労や苦難を重ねて生きて来ていた。
将来が見えていなかったあの頃とは違い、今では、将来どころか終活も視野に入れてもおかしくない年齢になってしまってる。

少女のままの夢物語を支えにしながら生きて来てくれた、あゆみの理想像。

それは、俺に取っては余りにも非現実的で夢にすらならない世界観でしかなかったんだ。

俺の今の現実は、妻子がいる定年間近のサラリーマン。
それ以上の何者でもなかったんだ。

あゆみの夢の延長線上に俺は存在はしないし、居てはいけないんだ。
夢は夢のままで、その夢を、夢の主人公が踏みにじる様な事をしてはいけないんだ。




あゆみは、あの頃の様な、無茶で乱暴なセックスをして欲しいと願ってはいたのだが、
病気に依って失われている体力面や犯されている健康面とか、あゆみにも現実問題としてのジレンマが立ち塞がっていたし、
そもそも年齢的にも無茶なセックスが出来る年齢ではなかった。


まだ通院をしなければならない状況や、
俺の家庭の事情などにも気を使い、
あゆみの抱いていた夢の世界を汚さない為に、お互いに傷付かない為にも、
関係をフェードアウトして行ったんだ。




訃 報



大学へ進学するための受験勉強を一緒にしてくれた、中学から勉強を疎かにしてきた俺に丁寧に根気強く受験に必要な勉強を教えてくれた。
多感でヤリ盛りな年頃に、性欲の吐け口として、思う存分やりたい事をやりたいだけやり尽くし合ってくれた、言わば恩人ですらあった青春時代の彼女。

そんな忘れてはいけない、過去の大切な思い人と再会をしたと言うのに俺は、
彼女だと言う事に気付かないだけではなく、汚いおばさんとまでに思ってしまったんだ。




あれから、もう数年の年月が流れていると言うのに、俺は未だに深い後悔の念を胸に抱きながら生きていた。




ある日、突然に配達されて来た一通の手紙。

送り主の名前には全く覚えはなかった。

しかし、その送り主の住所の名前は彼女の口から何度も聞かされていた港町だった。



飾り気のない、白い便箋には、
既に連絡を断ち切ってしまってから、暫くの月日が経っている彼女の名前が書かれていて、


その命日が記されていた。




孫娘の遺品を整理している際に、生前に大変お世話になっていた貴方から頂いた品物が、幾つも大切に保管された状態で出て来ましたが、既に今ではそのご縁も切れてしまったご様子なので、お知らせすべきなのかを迷いましたが、大切な孫娘の想いをと思いまして同封させて頂きました。

ご迷惑でなければ御些少下さればと存じます。


達筆で丁寧な文字で書かれた文章が、良く晴れ渡った昼下がりの陽射しを消し去って、立ち竦む俺を一瞬にして底知れぬ暗闇の中に引き込んでしまうのだった。

淡々とした静かな悲しみと居たたまれぬ後悔をもたらし、足許が揺らいでいた。


そして、その封筒からは、あの「鈍色のリング」が便箋の切れ端に包まれていたんだ。



確かに、大病を患って高校時代の面影は失われてはいたけれど、
再会後の彼女は、それなりに健康を取り戻している様に見えていたんだ。


つい、この間の出来事の様に甦る彼女の面影には、この世を去る影など見い出す事など出来なかった。

それは、彼女のあの姿に違和感を感じなくなるまでに慣れ親しんで付き合ってしまっていた、俺の油断だったのかも知れない。


あんなにも身近に感じていた大切な存在の人が、この世から居なくなっていたなんて。

もう、何処にもいないなんて。
もう二度と会えないなんて。







俺は、その後悔に追いやられ、居た堪れなくなって、ある日にその封筒に記してあった住所を尋ねて行ったんだ。




仏壇に上げたお線香の灰が、
くるんと丸まりながら、
燃え繋いでいる。


それは仏様が喜んでいる
記しだと、
何処かで聞いた覚えがある。


遙々と遠い港街の外れまで
長い時間電車に揺られて
始めて訪れてみた。


あれから三年。


忘れる事も出来ず、
亡くなった事実からさえも
俺は目を背けていた。


何度も聞いていた
あゆみの故郷の風景は、
始めて訪れたにも関わらず、
こんな薄情者の俺を
懐かしさの
中に誘うのであった。


赤レンガを積み上げた
倉庫の角を曲がると、
風景が一変して
目の前に穏やかな海が広がった。


潮風に背中を押されながら、
緩やかな坂道を登る。


確かに、あゆみに何度か
聞かされていた想像通りの風景に、
あゆみの子供の頃の姿が
見えていた。


港を見下ろす小高い山の上。


沖で停泊している船や
港の中で世話しなく動く船。


こんな美しい風景の中で
あゆみは育って来たんだな。


なんで今更になって、
伸び伸びとしたあゆみの
笑顔を思い出していた。


そうか、そうだったんだね。
ここで生まれ育ったんだね。



じっとこちらを見詰めたままの
あゆみの遺影に、
数え切れない想い出が廻り
身動きが取れずに
ただ見詰め合うだけの時が
過ぎて行く。


遥か遠くからの船の霧笛が、
何故こんなにも懐かしいのだろう。


立ち上がる事を拒むかの様に
遺影のあゆみが語り掛けてくる。


「ここが私の生まれ育った家なんだ。
話した通りに見晴らしが良くて、
素敵な住まいでしょ。

やっと来てくれたんだね。

何よ今頃になってから来るなんて、
遅過ぎるんだから、

ここから、
夏の花火や雪の港を
二人で見て暮らしたかったな。」


真っ直ぐに立ち昇る、
白く細いお線香の煙が
揺らめき踊り出す。


それはまるで、
おどけながら
家事をこなしていた
あゆみの後ろ姿にも似て、
細く華奢なラインを
模しているようだった。


丸まったお線香の灰が
音もなくぽとりと落ちた。


差し出された遺品には、
若き日の二人が
おどけて、はしゃいで、
揺らめいて見えた。






その名はあゆみ



去年の7月の話しです。
俺は、とあるサイトに例に由って例の如くに下らない独り言を書き綴り捲っていたのです。

こんな分けの分からない下らない絵空事にも多少のフォロワーさんが居てくれて、楽しみにしてくれたり、時には共感してくれたりしてメッセージを残してくれていたのです。


そんなフォロワーさんの中に、去年の7月頃からサイト上に残るメッセージではなく、Twitterのダイレクトメッセージ(DM)でお便りをくれる女性が現れたのです。

ハンドルネーム?ニックネームはちょっとギャバ嬢の様な名前だったので、本名を呼び会う様な関係でもなかったので、取り敢えずDM上での仮の呼び名を決めてやり取りをしましょう。
と、言う事にしてお話しをするようになったのです。

その女性は俺の書いている文章を読んで、彼女に取って俺は海の様な存在で、彼女はその中を自由に泳ぎ回る人魚になった様な気持ちになれたと言って、仮の名前には「海」の時を使いたいと、
心に響くお話しを書ける人と言う意味で「鳴」の字を合わせて「鳴海」にしたいと彼女が決めたのです。


彼女は離婚をして、暫くはシングルマザーとして子育てをしながら必死に暮らしていたのですが、体調を崩してしまい働く事が困難になってしまって、
結果的には、子供の親権を剥奪されたらしいのです。
その心労から精神的に不安定になってしまい、更に働く事が困難になっていたのです。

彼女は、そんな個人的な苦労を赤裸々に打ち明けてくれる様になり、
それを励ます様なやり取りを何度も何度も繰り返している内に、
いつしか彼女は、そんな俺に会って見たいと言い始めてくれる様になったのです。

しかし、たまたまネット上で知り合った相手の住んでいる場所は、そう近い距離にはありませんでした。
まぁ、新幹線で一時間ちょっと位でしたが、なにぶんにも、体調を崩してしまっていた彼女ですので、その一時間ちょっとの旅ができなかったのです。
俺はと言えば、
このパンデミックのさ中で左遷に合ってしまい、生活が判で押した様な正確な時間の行動パターンが当たり前になってしまっていたのです。
更に、長年付き合っている愛人のひろみの存在もあったので俺には自由な時間が作り難い
困窮した生活をしていたので容易には彼女と会う事が出来ませんでした。


7月から始まった文通?も7か月が過ぎた頃に、彼女の我慢の限界が来てしまい、体調の良くなったタイミングで会いに来てくれたのでした。

鳴海さんはとても美しくて清楚な雰囲気の落ち着いた女性でした。
こんな素敵な女性と結婚して、子供まで作った上に離婚してしまう男がこの世に存在するなんて、俺にはとても信じられませんでした。

それ程までして、わざわざ、素敵な女性が体調が余り良くないにも係わらずに、はるばると俺に会いに来てくれたのです。

そんな感動的な場面なんて、一生の内に一度あるか無いかの奇跡でした。

すぐれない体調と俺の縛られた時間の合間だけの、僅か3時間ほどのウィンドーショッピングでしたが、夢の様な時間を過ごせたのでした。

改札口での別れ間際に、俺の手を握って、
「必ずまた来るからね。」と言い残して彼女は帰って行ってしまいました。

それからのDMは、それまでの身の上話しよりも、もっと内面を包み隠す事のない繊細な性欲の話しや、この次に会った時には何処へ行こうとか、何をしようとか、とても身近な存在としての関係を築くビジョンを話す様になっていたのです。



そこまで俺に夢中になってくれてしまった彼女に対して、俺が先ずしなければならない事は、愛人のひろみと別れる事なんだと思いました。

元々、俺はあゆみの死を知らされて、その償いの対象としてひろみに愛情を傾けていた傾向があったので、一人立ち出来る様になったひろみとはそろそろ別れなければならない時期なんだと思っていた矢先だったんです。

ひろみには、ひろみとしての人生をこれからしっかりと歩んで行って貰いたかった。

どう転んだとしても、こんな先に望みのないオヤヂなんかと付き合っていて良い分けがなかった。

まだ若く綺麗な女を保っている内に、ひろみに合った男性と巡り合って、幸せになって貰いたかったんだ。

妙に、俺に都合の良い話しに完結させようとしているみたいなのだが、その時点で俺はそれが最良の方向性なんだと判断していたんだ。



そして、決してハッピーエンドではなかったにしろ、ひろみとはなんとか縁を切る事が出来た頃に、
彼女は自分が身動きが取れない事に業を煮やし、自分の住んでいるアパートの住所を教えてくれて、暇がある時にでも来られるんだったら来て欲しいと願う様になっていたんだ。




そして、とうとう彼女が、
住所と共に本名を教えてくれたんだ。



その名は、


なんと、、、





○○あゆみ。





だったんだ。

白髪

艶がなく纏まりのない乾いた栗色のショートヘアーが悲しくて堪らなかった。


あの頃。
お腹の上に股がって上からキスを迫って来る時には、汗ばんだ俺の顔に絡まって、決まって唇に纏わり付いて来た長い黒髪。

バイクで家まで送る時には、排ガスに曝されるのを嫌って、束ねてからジャケットの内側に仕舞い込んでメットを被ってたんだ。


あの自慢の黒髪が、今では頭頂部に幾つもの斑な白い筋を現して、
俺の知らない時間を過ごして来た事を物語っている。

急こしらえで塗った真新しい真っ赤なネイルが、手の皺を余計に引き立たせ、
薬指の第二関節までしか入らなかった指輪を嘲笑っているかの様にも見えてしまった。



あゆみ。



講義を終えて広尾のキャンパスから電車を乗り継いでわざわざ俺の住む町まで何度も会いに来てくれていた。

眩し過ぎるあゆみの都会的な美しさに、俺はあの町の寂れた景色の中で惨めったらしく嫉妬していたんだ。

どんどんと洗練されて行くあゆみのセンスに、あの町で朽ちて行く俺にはとても太刀打ちが出来なくなっていたんだ。

あの町の俺の通う大学と、あゆみの通う広尾の大学は、そのまま二人の距離に置き換えてしまったんだ。



あの日、
「私なんかが好きになっちゃって、ごめんね。」
そう言われた言葉に、あゆみとの距離を感じて、勝手に断ち切った思い。


電車の中で指輪を外した手でバイバイと手を振っていた、あの涙目のあゆみ。




あれから、何をどんな風に辿って来れば、こんなにも老けてしまうのだろうか。

いったい、どれだけの苦難を乗り越えれば、あのあゆみはこの姿になるのだろうか。



キラキラした笑顔で、指輪をした手を空にかざして、
「大切にするね。」と、約束にすらなっていなかった一言は、
あゆみの人生にどんな意味があったのだろうか。


確か、当時の値段で
二千円もしなかったと記憶している。







過去ログの
「だってバカだもん」
「とあるおばさん」
「リング」
「そこにいた彼女」
「だけど、独り言」
「寸劇」は全て
『あゆみ物語』からの連作です。

Twitter呟き集

ねぇ、私を本当に愛してるの?

そんな質問をする女になんて
俺の彼女でいる資格などない。



私を好きに扱って
天国より上にある
女のあの世に連れて行って



このイキ過ぎた体が大好物なんだ
屍の様にぐったりとした裸体を
オナホの様に扱い
遠慮なく突き上げる快感



未来がないからと言って
愛さないわけには行かなかったんだ



その答えが知りたければ
その前に
俺を選んだ君の過ちの
代償を支払ってから
解くべきなんじゃない?




君は俺の心を簡単に侵略した
陥落した俺の気持ちは焼け野原
もう恋なんてしたくない



肩が凝るほどの
巨乳じゃなくたって良いんだ
手の平に
柔らかさが伝わる膨らみがあれば
例え指に
細かな鼓動が伝わろうとも
慈しみの深さに遜色などない



一物が付いてるんじゃないの?
ってくらいの盛りマンが
俺は好きだ



きっと
麻痺していたんだと思う
彼女が出来て
家内を裏切り続けて来た
七年の年月
浮気をしている自覚なんて
なかった
良心の呵責など
感じなくなっていた
それ程までに
彼女は俺に
しっくりと馴染んでたんだ



回避するなんて
思いもしなかった
誘惑されているのだとも
感じなかった
余りにも純朴な思いが
真っ直ぐに俺を捉えて
逃げるなんて
選択肢は無かったし
極自然に受け止め
当たり前に結びあったんだ



新たな自我が貴方を選んだ
その判断は
女としての本能
そして必然だった
だからこそ
これ程までに深い愛情で
私は壊されるんだ



私の中の私が消えて行く
奥深くを貴方が
突き上げる度に
口から吐き出される理性と
注ぎ込まれる野生
行き着く所まで
預け切った体を
その果てまで
届けて貰える喜びには
とても抗えない



表向きは
尽くされているのだと
思ってた
実際は
打算的な駆け引きの産物
結局、女の優しさは
愛されたい欲望に
突き動かされている
だけなんだ



もう止めようよ
これ以上は
愛されたらいけないんだ
失うべき対価を
俺は
持ち合わせてはいないんだ



無限ループする後悔に溺れ
苦しみの果てに掴んだ物は
手のひらにねっとりと
絡み付く柔らかく暖かい
君の乳房だった。



ヤバいよね
もう昼過ぎだってのに
食欲より性欲の方が勝ってる彼女
4時間以上も
喘いでいられるのって
可愛い過ぎる



やべっ、
先週までやってた仕事内容
全く覚えてない
私は何をしていたの?
えっと、ここは何処?
私は誰?

出社したばかりなのに
もう帰りたい
そんな私はDX



ついさっき
走り出したばかりの
駆け出し者です

シューズが合わなくて
靴ずれが出来そうで
ぎこちない走りですが
実はスプリンターです



過ちに凍えていた俺に
手向けられたありがとうの言葉に
俺は一生治らない
火傷を負ってしまった



朝から疲れた
なんで何時もそんなにハッピーなんだ
明るいのはすごく良いんだけど
朝っぱらからテンション高過ぎ
もう少しお淑やかにならないかな
妻よ



好きだとか愛している
よりも
数年経った生活の中では
何よりも大切なんだと
染々と感じてる家内の存在



一つ一つ拾い集めて、
温めて。

少しでも近付きたい。
理解をしたいんだと。

何時も尋ねて、
幾つも聞いて、
紡いだ筈の君の心

間違いたくなかっただけなんだ。

君の心の取り扱いを。




俺色に染め抜いた彼女が

「ありがとう」と

口から吐き出した飴玉の様な
キラキラした言葉。

アスファルトに叩き付けられ
虹色に砕け散った。

そのキラキラの輝きの欠片が
実は涙だって事を
俺の踵が感じていた。




幾つもの愛してると言う声が聞こえた

いつ言われたのだろう
何処で言われたのだろう
誰から言われたのだろう
どうして言われたのだろう

何故そんな事を軽々しく言えるのだろう
こんな薄汚い俺の向かって

そんな言葉は俺には余りにも
惨め過ぎる



この距離にいる貴方が、

愛おしくて堪らなくなっている。

こんな事をして欲しい。

あんな事もして欲しい。

欲望を抑えきれなくて、

辛くて、苦しくて、

耐えきれずに

言葉に出してしまいそうになる。

貴方の物になりたい。

貴方のおもちゃになりたい。




何処でどんな選択を
大きく間違った訳でもなく
幾つもの小さな岐路を
ほんの少しずつ
間違えてしまっただけなのに

今となっては
こんなにも惨めでみっともなく
取り返しが着かない男に
成り下がってしまっている



女が全てを晒らけ出し
秘密を隠さずに暴露して
そうされる事を
望んで迫って来るならば
それに付き合うのは
当然の振る舞いであり
男としての礼儀なんだ




その女特有の
痛みに対する耐性と
それを受け入れて味わいながら
無限の快楽に変換して
痛覚を喜びと誇りに
等価交換する能力は
意識を失う寸前にまで追い詰めても
ふと自然な微笑みを
浮かべられる淵を
さ迷えるのである




一週間に五日も働かなければならないなんて文化的ではないし、野蛮だと思う。
しかも、年収三百万円以下だなんてやってらんないな



なんだろうな、好きだとか
愛してるなんて思わないけど
物凄く大切なんだってのは
感じてるんだ



夕闇の冷たい雨に
虫達の鳴き声が
濡れ流されて
足元に吹き溜まっている

傘を持つ手に
君の頬の温もりが伝わる

そうか
鳴いていたのは
虫だけじゃなかったんだ

向き合って
一つの影になる傘の下に
秋は訪れていた




夏草が朝露を纏い
キラキラと輝きを放ってる
霜になるにはまだ季節が浅く
草むらの中には
秋の名残の虫達が
ひっそりと息を潜めているに
違いない

それでも
早いもので
吐く息の白さは
移ろう季節を確実に
知らしめてくれる




急激に気温が下がりいきなり秋の気配が立ち込め始めてた
いちょうの葉っぱがようやく色づこうとしている最中だと言うのに
その下の路面にはもう既に銀杏が落ち始めていた
世界中の人々が破壊してしまっているこの地球のこの国の四季は確実に壊れ始めてるんだよね



赤信号に引っ掛かり一番先頭で停車した
幹線道路同士の大きな交差点
四方の歩道には信号待ちをしていた沢山の歩行者の群れが一斉に歩き出す。
リーマンやJKやOL風な雑多なお嬢さん。
俺はその群衆を見ながらその中にいる可愛い女性を探しては誠に勝手ながら幸せを願ったりしています




秋の夜空に浮かぶ月が
余りにも鮮やか過ぎて
ふと立ち止まり
しばし眺める

一服の感傷に浸るべく
すっかりと冷たくなった夜風に
煙を靡かせ
思い浮かべるのは
肩先で月明かりに
髪を輝かせていた
あの娘の愁い

灰皿に押し付けたのは
苦いお想いと冷たい後悔
火の粉も揉み消せずに
暗い家路を急ぐ




トイレットペーパーの芯が
歪んでて
カラカラと
気持ち良く回ってくれない朝
いつもと違う長さの
ミシン目で切れてしまった
本日のウン気が
とても心配な朝だ




秋の夜空に大きく輝く「海がめざ」
それを追う様に
優雅に泳いでいる「みずがめざ」の
今日の運勢は、(余裕綽々)です

どれもこれも
何一つ間違ってるよね



午前4時とうとう雨が降りだした
昨日の帰宅時間夜空にはまるで絵に描いた様な月と金星が仲良く寄り添って浮かんでいた
今頃あの二人はもう別れてしまったんだろうかと雨音に思いを馳せる

鈍色のリング

当時の値段で
二千円もしなかったと記憶している。

あれは確か、
表参道の古びたアパート前の歩道に
やる気のなさそうな
ヒッピー風のお兄さんが、
黒い敷物の上に
安っぽいアクセサリーや
ラクタを並べて売っていたのを、
あゆみんが笑顔で手招きをしてまでして
俺をその場に座らせて
選ばせたリングだった。


それはまだ
原宿にピアザが建つ
ずっと以前の話しだった。


そんなにも昔に
俺が買ってくれたんだと
嬉しそうに話してくれるおばさんが、
大切そうにドレッサーの引き出しから
出して見せてくれたのは、
傷だらけですっかりと
鈍色に色褪せてはいるが、
汚れやくすみのない光沢が
大切に保管されている事を
物語っているリングだった。


「歳は取りたくないよね。
指の関節が太くなっちゃってさ、
外すのに物凄く苦労してね。
それ以来、はめてないのよね。
これが指に入らなくなっても、
何故か何処かへ出掛ける時には
必ずお財布に入れて持ち歩いててね。
言わば、
私の御守りなのよ。」


そう言いながら
皺だらけの手を目の前に差し出して、
細く骨ばった薬指に
指輪をはめる様な仕草をする彼女の姿を
俺は黙って見ているしかなかった。



もちろん、
喜びはしなかった。
懐かしさや後悔なんかじゃないし、
恐怖からではないんだ。
得体の知れない複雑な感情が
腹の奥底から沸き上がって来て
鳥肌が立っていた。
分けも分からずに涙が溢れ出し、
心がざわついて嗚咽していた。



置き去りにした青春の過ちが、
あれからずっと葬られる事なく、
こんなにも長い時を経て
俺の知らない所で
こんな風に温め続けていたなんて、
そんな事を
俺は認められなかったし
認めたくはなかった。



けど、
磨かれたリングは
紛れもなく輝いていたんだ。

枕が・・・・・

枕の高さが合っていないんだ。

いや、高さではなく、高くなっている位置が違うんだ。

頭のてっぺんの方が高くて、首の方に向かって段々と低くなって行ってる。

これでは顎が引かれて頭が前のめりになってしまってる。

こうじゃないんだよな。

後頭部、そう、盆の窪辺りを高くしたいんだ。

だいたいこの枕は根性が無さすぎる。

一定の形を維持しようとしないで、中身が淫らに流動性があって、頭の重みで沈み込んでしまって、枕が頭の形に馴染んでしまうんだ。

だから枕と頭との接地面積が広くて、頭をすっぽりと囲んでしまうんだ。

中身の奴らは、頭に押し退けられて逃げ場を失って、てっぺんと両脇にたむろしやがるんだ。

これじゃ頭全体が枕にくっ付いてて、変に体温が逃げ辛くなって不快だし、首の曲がり方が不自然なんだ。

こんなんだったら、座布団を二つ折りにした方がよほど快適だよな。



そもそも理想的な枕の高さなんてのはあり得ないよな。

だって仰向けに寝てて、寝返りを打って横向きになれば当然枕の高さが同じじゃ駄目だよね。

仰向けから横向きに寝返る時に同じ場所で寝返る場合と、ただ体を横を向きにした場合の頭の位置は違うんだから、頭が常に同じ位置にある場合と左右に動く場合があるのに、理想の枕の高さとか言われてもなぁ。

寝返り姿勢や頭の位置をAIかなんかで予測して、
常にその時々に合わせた高さに調節してくれる機能が着いているんだったらば、理想的な枕の高さを保てるんだろうけど、

眠っている時に動きまくる人間の寝返りに対して、柔らかい臓物の入った枕でなんてとても対応できるとは思えないんだ。

寝相が悪い人などは、時として枕が足元にあったりするのに、快眠を約束されちまうのも変な話しだよな。



従ってだ。
理想的な枕の高さを求めるのではなくて、
理想的な高さになっている場所に頭を乗せられる様な眠り方、或いは寝相をすれば良いんだ。

よって、この枕は一夜にして不合格とする。







それと、カップルの場合の枕の話しなんだけど。

俺が学生時代に同棲をしてた時には、彼女と二人で貧乏学生だったから狭いアパートにシングルベッドに寝てたんだ。

二人で寝るのに、シングルベッドは狭いんだ。



まぁ、よくありがちな腕枕ってのがありましてね。

俺の片腕を彼女の枕と肩の僅かなスペースに上腕までズッポリと指し込んで、クルリと頭を抱込んでバグしながら寝むるんだけれども。

ここで大切なのが枕くんなんだよな。

バグしてる時の彼女の頭は俺の肩先に乗ってるのだけれど、いざ眠りに着こうとなれば、彼女の頭は硬い肩先よりも、俺のやっこい上腕に乗ってくるんだ。


枕くんがしっかりと彼女の頭の重みをサポートしてくれないと・・・
男性諸氏は多分、言わずもがなですよね。


腕が死ぬ。

瓶詰めの妖精 2

小さな小瓶が手のひらにすっぽりと収まり、たかが青いガラス製の小瓶だと言うのに、中を覗いた瞬間に、そこにはまるで大海原が広がっているかの如くに果てしない無限の広がりを感じたのだった。
青一色に彩られた、奥行きのある小瓶の中には、まるで砂丘が広がっているかの様にも見えていた。
何処かノスタルジアを感じさせる深い青が目に馴染んで来ると、その目の前の青に濃淡が現れる始め、その濃い部分が次第に人の形を成して行くのが分かった。

「ちょっと待ってね、ちゃんと見て貰える様に姿を具現化するからね。」

心に直接響く優しい声が心地良かった。

青は青よりも青さを増し、藍色に近い発色を成して次第に女性の形へと変化をして行くのだった。

やがて、小瓶の中に現れたのは、見事としか言い様のないプロポーションをした美しい女性が現れたのだった。

そのスタイルと言ったら、見事に均整の取れた減り張りのある丸みを帯びた凹凸が男の本能を激しく奮い立たせ、自分が覗いている物が小瓶である事を忘れさせるのだった。

「ねっ、これが私だよ。
どう、綺麗でしょ。」

俺はその美しさに言葉を失っていた。

それまで生きて来た中で、これ程迄に男の欲情を掻き立てるスタイルは、例えそれがグラビアであろうとも一度も見た事はなかったのだ。

もしも、この曲線美が具体化させられるとすれば、それは昨今精密に女体を具現化させる事が出来る様になったダッチワイフのそれ以外では再現出来ぬであろう。

「・・・・・」

余りの悩ましさに淫らな妄想を巡らせてしまって、ただただ見とれていたのだった。

「ねぇ、お願いがあるんだけど、
聞いてくれるかな?
あのね、・・・

ねぇ、ねぇ私の話しを聞いてるの!」

脳内に大音量が響き渡った。
ふと我に返る俺。

このテレパシーで伝えられる甘く優しい声と小瓶の中に姿を現した見目麗しき女性の存在に俺は我を失いつつも、この摩訶不思議な現象を受け入れ始めていたのだった。

「あっ、ごめんごめん、この夢を受け止められなくてね。
どこで自分の妄想と折り合いを着け様か悩んでたんだよ。」

「嘘吐き!」

恫喝が頭痛になって襲い掛かって来た。

「あのね、私はあなたの欲望を具現化した妖精なのね。
だから、あなたがいくら、どんな嘘っぱちを並べたとしても、そんなのは私には通用しないんだよ。
今のこの現実を受け入れて、さっさと私を買い取って、あなたのマンションに連れて帰ってよ。
いい!分かった。」




「なんだよ、すっげぇ高いんじゃんよ。
こんなにするんだったら、高級な風俗位だったら行けたよな。」

マンションへの道すがら、レジ袋に入れられた段ボール箱をユラユラと揺すりながら、独り言を呟きながら歩いていた。

「あのね、絶対に後悔はしないはずだよ。
だって私は、あなたの理想とする女性象を模した妖精なんだからね。
愚痴愚痴と文句を言わないで、黙って私を家に連れて帰りなさい。」