toshimichanの日記

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瓶詰めの妖精 2

小さな小瓶が手のひらにすっぽりと収まり、たかが青いガラス製の小瓶だと言うのに、中を覗いた瞬間に、そこにはまるで大海原が広がっているかの如くに果てしない無限の広がりを感じたのだった。
青一色に彩られた、奥行きのある小瓶の中には、まるで砂丘が広がっているかの様にも見えていた。
何処かノスタルジアを感じさせる深い青が目に馴染んで来ると、その目の前の青に濃淡が現れる始め、その濃い部分が次第に人の形を成して行くのが分かった。

「ちょっと待ってね、ちゃんと見て貰える様に姿を具現化するからね。」

心に直接響く優しい声が心地良かった。

青は青よりも青さを増し、藍色に近い発色を成して次第に女性の形へと変化をして行くのだった。

やがて、小瓶の中に現れたのは、見事としか言い様のないプロポーションをした美しい女性が現れたのだった。

そのスタイルと言ったら、見事に均整の取れた減り張りのある丸みを帯びた凹凸が男の本能を激しく奮い立たせ、自分が覗いている物が小瓶である事を忘れさせるのだった。

「ねっ、これが私だよ。
どう、綺麗でしょ。」

俺はその美しさに言葉を失っていた。

それまで生きて来た中で、これ程迄に男の欲情を掻き立てるスタイルは、例えそれがグラビアであろうとも一度も見た事はなかったのだ。

もしも、この曲線美が具体化させられるとすれば、それは昨今精密に女体を具現化させる事が出来る様になったダッチワイフのそれ以外では再現出来ぬであろう。

「・・・・・」

余りの悩ましさに淫らな妄想を巡らせてしまって、ただただ見とれていたのだった。

「ねぇ、お願いがあるんだけど、
聞いてくれるかな?
あのね、・・・

ねぇ、ねぇ私の話しを聞いてるの!」

脳内に大音量が響き渡った。
ふと我に返る俺。

このテレパシーで伝えられる甘く優しい声と小瓶の中に姿を現した見目麗しき女性の存在に俺は我を失いつつも、この摩訶不思議な現象を受け入れ始めていたのだった。

「あっ、ごめんごめん、この夢を受け止められなくてね。
どこで自分の妄想と折り合いを着け様か悩んでたんだよ。」

「嘘吐き!」

恫喝が頭痛になって襲い掛かって来た。

「あのね、私はあなたの欲望を具現化した妖精なのね。
だから、あなたがいくら、どんな嘘っぱちを並べたとしても、そんなのは私には通用しないんだよ。
今のこの現実を受け入れて、さっさと私を買い取って、あなたのマンションに連れて帰ってよ。
いい!分かった。」




「なんだよ、すっげぇ高いんじゃんよ。
こんなにするんだったら、高級な風俗位だったら行けたよな。」

マンションへの道すがら、レジ袋に入れられた段ボール箱をユラユラと揺すりながら、独り言を呟きながら歩いていた。

「あのね、絶対に後悔はしないはずだよ。
だって私は、あなたの理想とする女性象を模した妖精なんだからね。
愚痴愚痴と文句を言わないで、黙って私を家に連れて帰りなさい。」