toshimichanの日記

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たったそれだけの事

お久し振りでございます。
春先とあって、色々と忙しぶってしまいがちな今日この頃。
年金と失業保険だけでは生きては行けぬ世の中を渡り歩かねばならぬ故、ジタバタしております。
大手企業のお偉いさん達の収入は物価上昇率よりも遥かに増えて行っている中で、下級平民の時給は一向に上がる気配も見せずに、衣食住の生活水準は地べたを這いつくばるばかりで御座います。
あっ、ついつい愚痴ばかりが、、、
横浜のスラム街にも春は分け隔てなくこゆる。







長い長い沈黙が「ごめんね」じゃなく「ごめんなさい」の言葉で心が欠け落ちて行った
少しの沈黙の後の「ありがとう」で見事に砕け散った
それが、お互いどこにも矛盾を感じない最も調和のとれた別れ方だったはずなのに
視野の狭い恋愛の顛末なんてこんなもんなんだ







遠くから小走りで近付いて来た彼女が、
「遅れてごめんなさい。」
気を使わせたくはなかった俺は咄嗟に、
「大丈夫です、俺も今来た所です。」
息を整えながら、眼差しに僅かな疑心を込めながら、
「えっ、それじゃ私との始めてのデートに遅れて来たって事ですか?」
「えっ?・・あっ!・・・うん。」







自ら語らない事は聞きもしなければ、
尋ねもしなかった。
疑念も持たなければ、
心に留め置かない様にして来た。
無関心ではなく一歩離れた放任。
信頼でもなく信用でもないけれど
ただなんとなく
それでいいんだと
疑問も抱かずに納得して付き合っている







あれ?多分、昨日と同じ笑顔で会ってくれていると思うのに、今日の笑顔は柔らかく温かい感じがするのは何でなんだろう。
気のせいかな?
心なしか声の質も軽やかに明るく聴こえているような。
何かいい事でもあったのかな?
そんな事を俺が尋ねるのもお門違いだしセクハラだから、いつもと同じに接していよう。
でも、可愛いな、綺麗だな、素敵だな。
「ねぇ、ちょっとあなたに尋ねたい事があるんだけど、いいかなぁ。」
過去いちの飛びっきりの笑顔をこちらに向けて、
「私とお付き合いしてくれない?彼女にして欲しいんだけど。」







爪が手のひらに食い込むくらいに強く拳を握り締めていた。
足元に描かれたたった数センチ幅の白線を目指して走り続けていた日々が、今のこの瞬間に全てを結果として明らかに突き付けられている。
今更、後悔する事なんて何もない。
己に対して言い訳をしない為に、ここまで自分を追い込み、やれる事はやって来た。
言い訳なんて出来る分けもなく、惨めにこれが己の姿なんだと素直に受け止めるしかなかった。
なぜ悔しいのだろう。
どうして俺は拳を握り締めているのだろうか。
もう、明日から走る必要がなくなったと言うのに、あの辛さからは解放されたと言うのにどうしてこんな虚しさに負けてしまいそうになっているのだろうか。
俺はこの拳の中に、一体何を握り締めているのだろうか、

怖くて手が開けなかった。







二度目に貼られた値引きシールが半額だったので、つい手を出して買ってしまった。
きっと多分、賞味期限は今夜半までで明日の朝には切れているんだろう。
それでも、この値段で今日のこれからの時間帯をやり過ごせるのならば、これは無駄遣いにはならないはずだと信じて半額の値引きに誘われて部屋に持ち帰った。
元の値段だった
俺に取ってはここまで値引きされなければ絶対に手を出さなかった、価値の下がった売れ残り。
ちょっとおごそかにガサゴソとパッケージを開いて、夜のお楽しみ。

夜が明けて朝になり目が覚めた途端に、急激な腹痛。
やっぱり駄目だったんだ。
価値の下がった、値引きされた「愛」なんて物に手を出すもんじゃなかった。







「ねぇ、ちょっと手を貸してくれる。」
始まったばかりの映画を腰を据えて観ようとテレビの前で胡座をかいていたら、手を引かれてキッチンへと連れて行かれたんだ。
「ちゃんと手を洗ってからね。」
そう言われて、言われた通りに手を洗う俺。
「それじゃ、戻ろっか。」
「なぁ、手を洗ってからじゃないと駄目な仕事の?」
「そ、清潔なお手々でお願いしたいのね。」
元のテレビ前に俺を元通りに座らせてから、
「折角一緒にいられるのに手が空いてるんだったら、ずっと触ってて欲しいのね。
一生懸命にしなくてもいいから、指だけでもいいから中に入れて置いて欲しいの。
ねぇ、私、無理な事は言ってないよね?」







この空には、いったい何色の絵の具を交ぜたら俺の心の背景に相応しくなるんだろう?
この道は、いったいどんな人との出逢いの場へと続いているのかな?
この背中に浴びせ掛けられて来た、哀れみや非難は、背負ってる俺には見えやしないけれど、軽くないのは肩で感じてる。
道端でどれ程見知らぬ誰かに何度踏みつけられようとも、
どれ程の雑草が花を咲かせるように、そしてその一つ一つに名前がちゃんとあるように、この俺にだって、きっと花は咲かせられるんだ。
歪んでたって花なんだ。
汚れてたって咲き誇るんだ。
名も無き雑草として誰の目に触れずとも、この何色でもない空を仰ぎ自分なりの花を咲かせるまで俺は・・・







「もう二度と約束なんかしないから、
これが最後の約束だから、
ねぇお願い。」

泣きながら差し出された小指の爪に、
降り出した雪がふんわりと舞い降りて
君の体温を少しだけ奪っていた。

思わず、
ポケットの中に突っ込んだ両手を握り締め、
「最後にもう一度だけ会って。」の
お願いを果たしている自分の弱さを後悔していた。

二人の間には、余りにも冷たい雪しか降っていなかった。

差し出された小指が震えながら
ゆっくりとしおれる様に畳まれて行くやるせない光景を睫毛にとまった雪が遮る。

彼女の頬には、滴が幾筋も伝わり、
それは涙なのか、
それとも溶け落ちた雪なのかは
俺にはもうどちらでも良かった。

今まで交わした全ての約束は、
「さよなら」の一言で、
花びらの如くにハラハラと
舞い散るはずだった。

雪なのか、花びらなのか
足元にまで至らずに消え行く願いを
踏み潰す事もできずに
拒む心を瞳に籠めて視線を結ぶ。

恋人になるということは地雷が増えるということでもあるのだろうか。
思いもよらぬ真っ直ぐな目力に身の毛がよだつ。

たから嫌だったんだ。

俺が俺で在るべき俺の姿をそのままに、
包み込む様に慕ってくれる禿の幼女の如くの直向きさ。
そこから吐き出される願いの前で俺は情けないくらいに無力なんだ。







抱き締めていたら腕の中で君の呼吸を感じた瞬間に、つい溢れ出た「愛してる」の言葉が君の肩越しに零れ落ちてしまったんだ。
もちろん、嘘を吐いた積もりなど全くなかったけれど、それを真実にしてしまえる度胸はその時の俺にはなかった。
背中に回している手のひらが急激に昂る鼓動を感じ取り、俺の言葉が君の何処に届いたのかを知った。
一度吐き出してしまった言葉を取り消せる魔法なんて、この俺に使える分けもなく、
「嬉しい」と胸に顔を沈めてくる愛おしさに心が押し潰されてしまった。







遥か果てしない三年を思い不安の中で途方に暮れてた教室の隅っこ。
色も温度も感じられなかった見知らぬクラスメートが突然に垣根のない笑顔で教室の景色を手の届く広さに縮めてくれた。
それからの年月は、振り返れば掛け代えのない果てしない一瞬。







五年間も一緒に暮らして来た顛末の瞬間に、過去に一度も見た事のない見知らぬ他人の顔をした君が目の前に立っていた。
いつだって、どんな時だって探ろうとすれば、その気持ちは大体予想ができてた表裏のない素直で率直な分かりやすい君の表情が、今はどうしても読み取れない。

自分をそんなに酷い(冷たい)人間なんだと認める事もしないままに、
憎まれたっていいんだ、ただただ俺をいつまでも覚えていて欲しくて傷付ける事を選んだんだ。

それが正しくはなかった事を、今の今までずっと隠し持っていたその表情一つで如実に言い露す冷淡な無表情が、ある意味で「さようなら」に相応しかったのかも知れない。





この中途半端さ加減が俺らしいですねぇ。