なんでさ、
朝はそこそこ寒かったから
それなりの厚着して出て来ちゃったら
なになに?
南風?
鬱陶しい。
蒲公英
麗らかな陽射しの中で
一揺れのそよ風に
遊んでいたたんぽぽの綿毛が
悪戯に肩口をかすめて漂い
明るい空へと溶け込んで
舞い去って行った
掴もうと
手を伸ばしもしなかった俺は
吹いてもいない風に
何を斬られてしまったんだろう
伸ばす手を
躊躇わせた弱さで固まって
風に踊りながら叫ぶ綿毛から
目を反らしていた
いつかどこかで芽吹くだろうと
望みもしない願いを託し
ふわりとした柔らかさに
嫉妬した。
さようならの届かない肩先から
春風に委ねた悔しさで
真っ白な綿毛を汚しそうで
瞼を閉ざした