toshimichanの日記

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雷鳴

部屋の窓から落雷を眺めていた。
時々、テレビのニュース画像で観る稲妻とは違って、目の前に広がる実際のパノラマ映像は、一瞬の、しかも何処に落ちるのか予測の着かない唐突な自然現象でしかなかった。

遥か遠くに見えている稲妻は、正に対岸の火事の様で、全くの他人事であって、今の自分には関係のない別世界の出来事として、単なる自然現象が映像として見えているだけの景色なのだと、なんの危機感も抱かずに眺めていた。

なので徐々に近づいて来る黒く重たそうな雷雲をぼんやりと無感情で眺めていた。

間もなく、辺り一面の景色が真っ暗になり、どうやらあの雷雲がこのマンションの頭上にまで触手を伸ばして来た様だった。

と、思っていた矢先。
目の前が瞬間的に眩い閃光に包まれた。
視界が強烈な光で真っ白になって何も見えなくなった次の瞬間には、
バリバリと大気が破裂したかの様な轟音で、お腹の底で和太鼓が連打された様な雷鳴が鳴り響いた。

恐怖ではなかった。
恐怖と言うよりも、驚きだった。
弛み切っていた私の気持ちに対して強烈なビンタを喰らった様な衝撃を閃光と爆音に因ってもたらされてしまったのだ。

全身がジーンと熱くなり、ジワッと下腹部が濡れて行くのが分かった。
それはまるで、あの人に股間を蹴り上げられた時の衝撃に似ていて、妙な性的興奮を呼び起こしてしまったのかも知れないと思った。

痛みこそないけれど、突然お腹に響く爆裂音で下腹部がキュンとなってしまったのだ。
こんなにもあの人がしてくれていた、あの痛みが切なく恋しく思えるなんて、
そんな自分の身体が可哀想に感じてしまった。


だと言うのに、一方では、
大粒の雨がテラスのウッドデッキに打ち付けて、水飛沫がぴょんぴょんと飛び跳ねる様が、まるで子供の頃に見た、蛙の飛び跳ね方に似ていて可愛い、、、なんて妙に懐かしさなんかを感じたりしている今の自分を客観視してみたら、

あっ、私、
壊れてるんだな。
と、感じさせてくれた。