toshimichanの日記

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水墨画

聞こえて来る筈の音が

部屋まで聞こえて来ない。

静寂な雪の音色に包まれている。

まるで真綿を敷き詰めた様な

暖かそうな景色には、

誰の足跡も残せない真っ白な拒絶と

全てを包み込んで自由を許さない

厳しさが見えていた。

 


窓の外に広がる水墨画の様な

色彩を失なった色調の景色。

それを静かに佇み眺めている君は、

その景色を否定するかの様な

目に鮮やかな真っ赤な

ショーツだけの姿で

窓硝子越しに

ワイングラス片手に微笑んでいる。

 


もう何年もの時間を

この彼女と過ごして来た。

今さら、

特に珍しくもない筈の裸体なのに

こうやって恥ずかしげもなく

改めて目の前に晒されてしまうと

その曲線美の素晴らしさに

圧倒されてしまう。

 


モノクロの雪景色を背景にした

そのプロポーションには

抱き慣れ親しんだ

エロティシズムなどは

全く感じない、

芸術的な美しさを感じてしまう。

なんて均整の取れた

見事な女の姿をしているのだろうと、

見惚れてしまうのだった。

 

 

 

雪国のホテルでの昼下り

こんな時間まで

取り残されてしまった二人は

もう身体を重ねる事にも

飽きてしまっていた。

 


眼下の駐車場に置かれた車は、

その車体をすっかりと隠して

身動きの取れなくなった二人を

このホテルの一室に

足留めするには十分な言い訳を

作ってくれていた。

 


もう暫く俺は、

この麗しい女神と共に

この雪景色を堪能していられる事に

妙な満足感を感じてしまうのだった。