toshimichanの日記

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そんな理由で、

掛ける言葉を失った、
風を孕んだ髪が舞い上がり
チラ見した横顔。

強がる事も出来きなくなって
表情を失った彼女が
大丈夫な分けないのを
俺は良く知ってる。

だからと言って、
選び切れずに呑み込んだ
幾つかの言葉の候補を
手探りで探しても
喉の奥
胃が痛み出す程の
苦しさにさいなまれ
たった一言
「さようなら」と
陳腐な言葉にしか
ならなかった。

しかも
聞き取れる様な声量にも成らずに
喉に絡まり彼女には
届かなかっただろう。

その瞬間から、
あんなにも気軽に触れて来た
俺の、その髪、その頭に
手が届かなくなってるのを
ゆるい風が教えてくれたんだ。

もう、気楽に彼女に触れる事は
許されなくなったんだ。

生暖かい緩やかな風に漂って来る
苦い涙の匂いが俺を拒絶している。

ここから先は、
離れて行くばかりの二人の距離。
一歩後退さればその間には
無数の甘い思い出の壁が立ち塞がり、

踵を返して背を向けた途端に、
積み重ねて来た
小さな日常が重く背中に
のし掛かる。

嬉しかったし、
楽しかったし、
幸せだったんだ。

有り余る膨大な思い出の
その重圧を背負って
動かない足を
離れて行く方へと投げ出す。
一歩一歩。

振り向く勇気なんて、
振り向く責任なんて、
ヘタレた俺には負えやしないんだ。






ニコニコと意味ありげな
笑顔のままでじゃれ着いて来ては、
噛みつく様に
キスを浴びせ掛けてくる無邪気さは、

疑いも隔たりも、遠慮や躊躇いも
負の感情は何も抱かずに、
ただ好きだって感情だけに
突き動かされてて、
顔中べちゃべちゃにされるまで
逃げ切れない嬉しさに
溢れてたのに。



手に入れたもう一人の自分の
大切な拠り所。

彼女が居れば良い。
彼女が全て。
彼女は俺。

心を預け、委ね、託したんだ。




俺色に染め抜いた彼女が
「ありがとう」と
口から吐き出した飴玉の様な
キラキラした言葉。

アスファルトに叩き付けられ
虹色に砕け散った。

そのキラキラの輝きの欠片が
実は涙だって事を
俺の踵が感じていた。

そこからは、
離れて行くばかりの背中
ここで振り返ったとしても
何一つも
やり直せやしないんだ。

やり直しては
いけないんだ。




お互いが見えなくなるまで
求め合ってしまった滑り出し。

愛されてる事に
ドップリ浸かって馴れ合って
求める程に失ってた
不自然な思い遣りや優しさは、
いつしか、ふと、
本当は他人なんだと
気づきの糸のほつれを
見つけてしまったんだ。





ゼンマイ仕掛けの不倫恋愛。
会う度に我武者羅にネジを巻き
貪り合った。

空回りの全力ダッシュ
白煙を上げて
自分をコントロール出来ずに
突っ走ったんだ。

腰が砕けるまで
ひたすら突き動かして
これでもかってくらいに
思いをぶちまけた。

そうする事で
求めている激しさを表し、
無我夢中で愛してると言う事を
表現してたんだ。

果てれば果てる程に幸せだった。
果ててくれれば、嬉しかったし、
際限なく果て続けてくれるから
満足だったんだ。



足元も見ずに、
求め過ぎてしまったんだ。

立場を考えずに、
与え過ぎてしまったんだ。

それを過ちだと気付かずに、
ここまで傷口を
広げてしまっていた。

取り返しの着かない濃厚な時間を
重厚に積み重ねて、
挙げ句の果てに、
、、、、、



「さようなら」の
終止符。



体に刻み込まれた習慣。
慣れ親しんだ愛撫。

求められれば、
預けられた身体に
でき得る限りの手管を施し
極限の限界にまで
送り届けていた。

危険過ぎる終着駅。
危ない肉体関係。

果ての極地まで追い込んだ彼女の
虚ろな眼で微笑む笑顔は、
涅槃の境地なのか。
安らかで穏やかで柔和な淫乱の表情。

でもそこは、
一歩間違えれば、
女としての人生を失う程の
危険な行為だった。


だから、もう。
それ以上に踏み込むのは
危険なんだ。
女である部分が壊れてしまう。
壊してしまう。
これ以上は無理なんだ。
ダメなんだ。
してはいけないんだ。

痛みや苦しさは
快楽なんかじゃない。

辛さに耐え抜く事が
愛なんかじゃないんだ。




俺の足りない物、
欲しい物を彼女が持っていた。

彼女の求めている欲求、
行きたい場所へ
俺は送り届けて上げる術を
知っていた。

一致してしまった性癖がもたらす
加速度的な親密化は、
下着を着ける事を許さずに、
行為はどんどんと
過激になり苛烈を極めながら
エスカレートして行ってしまう。




彼女の身体に刻まれた傷跡は、
俺って男がいた証。

女として、
極限を極めた快楽を
味わって来たと言う証。

その身体に刻まれた
俺の名前。

俺にそこまで許し、
求めた彼女の愛の証明なんだ。




だからこそ、
二人は一緒にいてはいけない間柄に
なってしまった。

俺は、この先、
彼女に何をしてしまうのかが
分からない。

彼女はこれから、
これ以上の
何を望んで来るのかが分からない。

身の破滅をもたらす関係。

際限のない夢。





たがら、
そんな説明は、

要らないよね。


これが、
二人の為に、
俺が下した
最良の判断なんだから。


多分、

これは、

恋愛なんかじゃ
なかったんだよ。