toshimichanの日記

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なんの話し?

たった一ヶ月程度だった。
「会いたい」コールは日を追うことに頻度を増して、とうとう「もう、限界なの」に達してしまっていた。

「少しの時間でも良いから」は、具体的な時間を2時間から1時間へと減らして行く様になり、切羽詰まった女心を叫んでいた。

俺は別に会いたくない分けではなかったが、確かに、会わない方がいいんだとは思っていたんだ。

何がどうしてそんなにも、のめり込んでくれるのかが理解出来なかった。

会いたがってくれるのは、男としては嬉しい限りなのだが、
それ程の魅力をこんな俺が持っている訳もなく、先ずはその目的と、そうなってしまう心理状態を知りたかったのだ。

もう既に何度も手は出してしまっていた。
それは、有りがちな男女の出会いからの流れで、成り行きとも呼ばれているようなもので、決して一目惚れとか、運命的な出会いではなく、あくまでも出来心から始まってしまったものだったんだ。

相性はと言えば、俺的には彼女は激し過ぎるとしか言い様がないのだが、彼女が求めている行き先にまで送り届けて上げたかったから、
そんな乱れ方に戸惑いもせず、呆れもせずに即座に順応し対応して上げていたんだ。

つまりは、彼女からして見れば、して欲しい事、やって欲しい事をしてくれる男が現れた的な存在だったのかも知れない。

しかしそれは、あくまでも性的な欲望や満たされていなかった肉体的な不完全燃焼に対して手助けを添えて上げただけであって、決して精神的な安らぎや、心を満たす様な、況してや恋愛感情を抱かれる様な類いの優しさを与えた覚えは俺にはなかったんだ。

やっている事と言えば、恨まれる事にはなったとしても、間違っても愛されなどはしない残忍な行為ばかりで、痛みや苦しみ、それが終わった後にまで暫くは苦痛が残っているであろう性的暴力でしかなかったはず。

確かに、事後に労ってはいた。

それは、求められたからと言って、そうするべきではない。
やってはいけないレベルの残虐な仕打ちを与えてしまった、俺の後悔から来る償いとしての労りであって、ある意味での人道的な事後処理でしかなかったはずなんだ。



会えばとことん付き合った。

言うまでもなく、それはもはやセックスなどと言うありふれた性的な交渉ではなく、女の底知れぬ貪欲な炎を火傷を覚悟して踏み潰すかの様な修羅場だった。

逃げる事を封じ、拒む事を防いだ。
悶える動きを固縛し、叫ぶ声を殺した。

顔色だけを頼りにして行き着く所まで送り届けて上げていた。

呼吸を管理したり、頸動脈を圧迫したり、
水分を補充させたり、尿意を玩んだりと体調観察しながら何度も何度も繰り返し、飽きる事なく送り続けている内に、意識を保てる限界が見えてくるんだ。


登り詰めた場所から、戻れなくなって呼吸をする事が出来なくなっていたり、
頂点の高みを更に高くする為に首を絞めたり、
過呼吸が続いて、喉が乾いてくっ着いてしまってたり、
おしっこを大量に噴出して脱水症状にならない様に水分補給をして上げたりと、
おおよそ一般的なセックスではあり得ない惨状にまで追い詰めていた。

そこまでしても、女性の性欲とは枯れ果てる事を知らずに、健康を害する覚悟をしてまでも陶酔に浸っていたいらしいのだ。



半狂乱である種の錯乱状態は、体力が失われて行くに連れて沈静化し、脳内麻薬の枯渇によって女としての意識が取り戻されて行くのだろうか。

修羅の形相が次第に穏やかな安らぎを取り戻し始めるんだ。

一旦、とことん行き着く所までの果てを味わって来た表情は、実に美しく穏やかで、涅槃とでも言うのだろうか。
感情を一切表してはいない無表情の様に見えていながら、それでいて見ているこちら側の心情を映し出すかの様な変化を纏うのだ。

それはおそらく、彼女の持っていた汚れた内面が浄化された、その時点で彼女自身が持つ本来の美しさを具現化できているからなのだろうと勝手に推測してしまうのだ。

そう見えてしまうのは、自分の行った残虐な行為を正当化させたいが為に、単純に俺の後ろめたさがねじ曲げた映像なのかも知れないんだ。

しかし、彼女が美しく見えるのは、それが幻想だったとしても実感しているのは事実ではある。

そんな彼女に対して俺は、労り以上の優しさを見せてしまっていたのだろうか。


人はそんなものを「愛」とは認めてはくれない。

けれど、そこに意識を集中して夢中になっていた自分を否定は出来ないし、それが労りなんだと自分に言い聞かせ納得させてしまうのは、いささか自分への裏切りの念を禁じ得ないんだ。

だからと言って、それが愛なんだと言いたくない自分がいる。



彼女の言う「会いたい」と言う言葉の裏側に秘められている歪んだ性欲の吐け口としての俺の存在価値は、彼女に取っては安寧な日常生活を送る上で必要不可欠な精神安定剤であって、決して俺に愛情を求めている訳ではないんだと自分を戒めているんだ。



だから、二人の関係性に恋愛感情は存在していないんだ。