長い沈黙が二人の間に、
薄い氷の皮膜を
作ってしまっていた。
僅かな言い訳を
投げ掛けたとしても、
その薄い氷を砕くだけの
語彙力を持たせる事など
出来はしない。
だけど、
言わなければ、
分かっては貰えない。
言葉にしなければ、
何も伝わらない。
言ったとしても、
理解は得られない。
そんな事は
最初から分かっていた。
沈黙は長引く程に、
打ち砕く破壊力は
萎えて行く。
二人の距離が近い程、
氷は薄くて頑強に固まり
手の届く距離でさえ、
気持ちは伝わらなくなる。
当たり前に出来ていた筈の
仲直りは、
結ばれた心の成せる技。
氷が隔てた二人に
沈黙を破る術は、
見付けられない。