出逢って間もない頃に、彼女を元気付けるために何度も何度も励まし続けていた俺に対して、彼女がその応えとして書いた手記。
本人の了承済みです。
ご注意と致しましては、暗くなりますので御覚悟の程を宜しくお願いします。
限界になっているのに
助けてと伝えられる人が
私の傍には誰もいなくて、
それを話せる人が
何処にもいなかった。
生きているのが辛いのに、
それを誰かに理解して貰おうとは
していなかったし、
誰に話せば良いのかも分からず、
何をどうすれば良いのかすらも
考えようとはしなかった。
今居る場所が、
自分の居場所だなんて
思ってなかったけど、
この場所以外に
私が居ても良い場所なんて
あるとも思えずに、
こんな場所に
居座る積もりもなかったけど、
ここに居続ける惨めさには
耐えられ続けているから
私はまだここに居るだけなの。
一人では生きていけない事は
分かっていたけど、
それでも
頼れる誰かが何処かに
居るとも思えずに
探す手段を諦めていたし、
探そうともしてはいなかった。
ここに居る自分の声が
誰かに届くなんて
考えた事もなかったし、
届け様ともしなかった。
誰かが私の声に耳を傾けるなんて
私の話を聞いてくれるなんて
考えもしなかったし、
望んでもいなかった。
会話や対話ではなくて
腐った私の心から染み出て来た
汚い膿の様な独り言が
唇を溶かしながら
独りで部屋の隅に
垂れ流していただけだった。
それでも
私はこんな自分をちゃんと
理解している積もりでいたし
私自身が私を許していた。
そんな自分を愛していたの。
大切にはしていた積もりだった。
だから、
人生の最期くらいは
自分の死にたいと思った
タイミングで
死んだっていいと思ったし、
それくらいの自由は
与えられると思ってた。
その踏ん切りは
いつでも着けられるのだと
常に心に留め置いていたけど、
だけど、出来れば、
何も残さずに去りたかった。
けど、ここにこうして
生きてしまっている以上は、
この体は存在してしまっている。
例えこの場で
命を絶ったとしても、
この屍はここに残され
朽ち果てる前には
誰かの手に因って処分が
成されるのだろうと思うと
自分の知らぬ手や心に
曝される事が嫌だった。
事務的に物として
処理されるのであらば、
そこには、
憐れみは存在しないけれど、
この体が、
何処かで生を受けて
そこまで生きて来た遍歴や
心情、境遇などを知られた挙げ句に
死に至った経緯や背景を
推測され哀れみを掛けられるのは
卑しくて耐えられないのね。
その為には、
何もない、誰もいない。
何処でもない場所が欲しかった。
そんな下らない欲が
心を満たし始めていたのね。
それが私。
それを理解出来ない様な貴方には
何も求めないし、何も話はしない。
何も感じないし、
期待などする筈もない。
語り掛けても欲しくはないし、
傍に居て欲しくない。
同じ傷を背負う覚悟もない貴方を
傷付ける積もりはないから、
私の呼吸が覚られる場所には
居て欲しくはないの。
私を絶望させる様な言葉を
選べる神経が貴方にあるとは
思えないし、
同じ様に、
私を救える様な強い魂を
宿しているとは感じ得ないから、
貴方は不適合なんだと
拒むしかないのね。
そんな眩しい優しさを
呟ける様な貴方は、
私なんか一ミリも
理解出来ない筈よ。
どう？思い遣りで
飲み込んだはずなのに、
喉元近くで苦味を増して
痛みに渋味が混ざり出すのが
分かる筈よね。
その苦味は私から涌き出てる毒。
そんな事に自分を
無駄使いしないで欲しいの。
貴方が何をしたって、
変わる事のない私には、
何も響かないの。
幸せの高見から
見えているこの私の姿には
何も届きはしない。
私と同じ様に私を愛せるとでも
思っているの？
私が呪う様に私を忌まわしく
感じられるのかしら？
私の最期を貴方にだけは、
知って欲しくはないし、
感じても欲しくはない。
だって、
今の貴方は、
誰よりも私の痛みを理解しようと
してしまっている。
そんな事は、
私の死に様の構図には
あってはならないんだもの。
だから貴方には、
傍にいて欲しくないの。
