toshimichanの日記

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直後の果て

ベッドで項垂れたまま、

薄汚い涙を流し続けていた。

俺は泣いているんだなって、

俯瞰で眺めている自分が傍にいる。

何日間も、シャワーも浴びず、

風呂にも入ってない汚ならしく、

みすぼらしい男が、

不様でみっともない姿で泣いていた。

掻きむしって、洗ってない髪の毛は

ボサボサでグシャグシャ。

疎らに白髪が混じった髭が、

口に入る長さまで伸びている。

 


「それじゃ、行くね。」

 


見送りもせず、

キスもせず、

手も握らず、

手さえも振らなかった。

 


そんな別れ方なんか

ありはしない。

まるでスーパーに買い物にでも

行くかの様に、

しかし、後ろ姿の一歩一歩は

重かったのかも知れない。

そんな変化など、どうでも

良かった。

 


4年間、ひたすら愛し合い

共に苦しみ、励まし、支え合った。

闘い、立ち向かい、傷付き、慰め合った。

生活の全てがみさえ一色だった。

他には何も無かった。

何も要らなかった。

 


解離性人格障害

闘病と呼べる様な、病との闘い

などありはしなかった。

病院を探し、話しをして薬を貰い、

様子を診て、絶望して。

また病院を探し、

催眠療法も何件か試し、

喜劇や演劇、コメディの映画

ばかりを見漁ったりもした。

しかし、美紗絵やみさえやチャエ

は、みんな元気だった。

 


俺は、それで何も構わなかった。

なんの支障もなかった。

まんまの彼女を愛せたし、

全ての彼女を受け入れて暮らせた。

 


会社の中でもみさえは常に視界に

居て

マンションに帰ればみさえが居た。

寝ても覚めても、みさえは常にいつでも側に居た。

笑って、怒って、悲しんで。

食べて、セックスをして。

 


みさえが居て

チャエが居て

美紗絵が居た。

 


俺のみさえ

穏やかで暖かいチャエ

明るくてお転婆な美紗絵

 


そんな別離れなんてありはしない。

離れるなんて絶対にない。

別れるなんてあり得ない。

 


きっと、

そのドアを開けて、

ブツブツと文句を言いながら、

この部屋の掃除をする為に、

俺を浴室に引っ張って行って、

ゴシゴシと体を洗われてしまうんだ。

そして、一緒に部屋の片付けを

二人で笑いながらするんだ。

 


そして、二人の寝室に連れて行かれて

グッチャグッチャのセックスを

これでもかって位して、

疲れ果てて、泥の様に眠りに着くんだ。

 

 

 

叫んでいた。

何度も何度も

みさえの名前を大声で。

 


声なんて、

とっくに枯れ果てて、

掠れた激しく吐き出す息しか

していなかった。

 


相変わらず、涙は止まらずに

ぶっ壊れた涙腺は汚泥を垂れ流し

続けていた。

 


相変わらず、悲しくは無かった。

何故か、辛くも無かった。

 


だって、

そんなの

信じられなかったから