絶え間なく降り注ぐ桜の花びらの中で、
白く明るい花曇りの空と、光る海を見下ろしながら、のんびりと三浦半島の岡の上で過ごして来たよ。
平日だったから、人出もまばらでゆっくりと二人切りで過ごす事ができたんだ。
ほぼほぼ素っぴんで、何故か飾り気のない白いブラウスに薄手のジャケット。
短めのタイトなスカート。
一見、営業回りのセールスレディーかよ。
って突っ込みたくなる様なコーディネートの彼女は、
いつもの様な「愛してる」じゃなくて、公園のベンチで横並びに座って「大好き」と遠い海に向かって言う彼女が、彼女らしくなくてね。
その「大好き」が誰に向かって投げている言葉なのか、俺には他人事の様にしか聞こえていなかったんだ。
こんな金曜日の昼前の時間帯。
寂れた観光地の、だだ眺めだけが良いだけの名も知らぬ公園の片隅。
桜だけが、場違いに華やかで見事だった。
それはまるで、自分に言い聞かせているかの様に、自分に問い掛ける様に「大好き」と繰り返していた。
「大好き」どんな思いが込められていたんだろうね。
彼女の唇を掠めて散り行く桜の花びらが、その言葉に触れると一瞬にして燃え尽きて消え去って行くかの様な錯覚に襲われた。
その言葉に込められた彼女の気持ちの激しさや揺らぎが、俺には見えていた様にも思えたよ。