toshimichanの日記

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それまでの俺

なぜ、

こんなに似合わない翳りを

纏っているのだろう。

儚げな可愛らしさに

冷たい蒼い陰が、

滲み出していた。

 


この表情が

無邪気に笑うと、

どれだけ

可愛いくなるのだろう。

このどことなく

幼さが残る顔立ちが

笑顔になったら

どれだけ可愛いのだろうか。

 


心のざわつきが

抑えきれない。

 


無理に平静を装い、

落胆してしまった自分を

隠しながら、

何気ない会話を組み上げて

俺との距離を測ろうと

試みている。

 


その瞬間まで、

憧れていたのかも知れない。

待ち望み

もしかしたら

恋焦がれいたのかも知れない。

 


頼れるはずの支えの正体に

心が打ち砕かれ

直ぐにでも

逃げ出したい気持ちに

そっと

重い蓋を乗せる音がした。

 


今まで、

私はこんな人を思い

こんな人に、

温もりを感じていたなんて。

 


落胆は、

どんな言葉の端にも

どんな態度にも出しては

いけない。

だって、

この人は嘘など吐いては

いなかったのだから。

ありのままの姿で

私を迎えてくれたのだから。

ガラガラと瓦解する

期待と憧れ。

それが、

ふとした瞬間の

仕草に、

視線の揺らぎに

感じられている。

 


俺には、

もう、

彼女を救う言葉など

何処を掻き回しても

出て来やしない。

 


夕闇に包まれた

冷たい街並みが、

窓ガラスの外に広がる

お洒落とは言えない

寂れたカフェで向き合い

無理に浮かべる

造りものの笑顔。

途切れ途切れの弾まない会話。

 


それまでに、

積み重ねて来た

幾月かのメールのやり取りで

結び合っていた絆の束は

俺の見た目の一瞬

たったの一太刀で、

呆気なく切断された。

 


背負い切れない悲しみと

立ち上がれない程の痛みを

抱えて、

打ち震え、怯え、

泣き叫んでは、

救いを求め続けていた。

 


そんな彼女の、

辛さに満ちた暮しを

俺は、

具に知らされ、語られ、

打ち明けられていた。

それは、

相談ではなく、告白。

 


文字が語る日常に起こった

出来事は、

彼女の心と身体を

執拗に、惨く押し潰す様を

赤裸々に語り、

俺の心にも的確に痛みを

伝えていた。

 


それは、

裸の人としての感情や

女としての苦しさ、

独人の生き方の辛さ。

決して失っていけなかった

愛情の蒸発。

 


目に見えぬ話し相手は

彼女の中に偶像を作り

憧れを抱き

信頼を築き上げてしまった。

 


言葉の端々に

信頼が見えていた。

時には、憧れ。

もしかしたら、

恋愛感情だったのかも

知れない。

 


俺は、いつしか

それを感じ、それを恐れ、

それを避けて、それを拒んだ。

 


だって、

こんな男だったから。

 


彼女は、いつの間にか

それに頼り、それを望み

それにすがり、

それを欲しがってしまった。

 


見えていた結果は

見えていた通りの

心の動きが

目の前にあった。

 


多分、

見た目以上の絶望感を

俺は

彼女に味あわせている。

 


俺は何故、

こんなにも

醜いのだろうか。

 


文字に表す

優しさ、思い遣りは

イケメンなのに

その見た目は

余りにも醜男。

 


それは、何度も何度も

繰り返し繰り返し

嘘も偽りもなく

俺の正体は

語り尽くしていたはずなのに。

 


出来る事ならば、

文字だけで、

言葉だけで

救って上げたかった。

 


たけどそれは、

嘘になるから、

助けて上げたい気持ちに

自らが背いてしまう事に

なるから。

 


それは誠意と言うよりも

ほんの僅かな期待だった。

助平心も否定はしない。

下心も確かだった。

 


そんな自分を

この瞬間に

殺してしまいたかった。

この拳が潰れるまで、

殴れる全ての俺を

殴り続けたかった。

 


傷付いた心を

引き摺りながら、

僅かな期待と憧れを胸に

遙々と長旅に身をやつし

こんな男に会いに来て、

こんな演技を

繰り広げなくてはならない

憐れ過ぎる彼女。

 


手に取る様に、

心の軋みが伝わって来る。

どんな絶望なのかな?

どんな落胆なんだろう?

 


もう、何一つ言葉が

出て来やしない。

 


もういいよ。

貴女の心の機微は、

切れた絆でも

俺には充分に感じるから。

 


もういいよ。

そんなに隠さなくても、

もうこれ以上、

貴女を

傷付けたくはないから。

 


まだ冷め切れていない

カフェオレを飲み干して

ごめんね。

ここまでが

俺の描いてたストーリー。

 


その演技

あのドアまでは

続けてくれたら嬉しいな。