コロナ事変 2
だがしかし、この恩情溢れる人事異動は、俺に取って大問題がはらんでいた。
俺には本社近くの、その通勤途中に、俺の通勤途中だからと言う理由で、わざわざカノ地に引っ越しをしてくれた彼女が居るのです。
仕事の帰りにちょいと寄れる。
地方出張にもサッサッと同伴旅行が出来る。
本社の目と鼻の先の駅近くにわざわざマンションを構えてくれた不倫相手が居るんです。
どうするの?
と言うよりも、どうもしない。
どうも出来ない。
が、結論です。
不倫相手の彼女は、自分の置かれた立場を充分に理解してくれている、聞き分けの良い、素直で従順な女性。
が、それが逆に痛々しくも可愛い過ぎるし、逆に、恐ろしい。
これを機に、別れよう。
とか考え様とする俺を見抜けないほどの鈍感な女性でもなく、素直で従順は裏返せば、一途でひた向き。
執着であり、固着。
それまでは出張族の俺。
地方出張で2~3日家に帰らないのはざらで、長ければ1ヶ月の長期出張もあったりしてた。
年間の三分の一は家には帰れない、帰らない出張族。
そして彼女は無職。
と言うよりも、莫大な遺産を相続した資産家。
一生働かなくても余裕で遊んで暮らせるだけの資産を持っている自由人。
そんな不倫相手が、出張に着いて来ない理由は無かった。
西は関西地区から東は青森まで、不具合やクレーム処理の為の出張の毎日に彼女は物見遊山、温泉巡りの同伴旅行三昧。
夜は彼女と寝て、休日は二人で観光地を巡り歩いていた。