我が儘を言ってくれる。
我が儘を言って来る。
ってのは、俺に対して遠慮が無く、気兼ねせずに自由に自分の要求を伝えられているって事で、ある意味では心を許しているって事であると言う反面で、それだけ不満を抱えてしまっているって事の現れでもあるんだろうと思う。
一方、言いたい事が、多分、沢山あるのだろうと予想が付くのだけれど、それを言ってくれない。
どうして欲しいのか、何をして欲しいのかを具体的に言い表してくれない人がいる。
確かに、付き合いはそれ程は長くはないのだが、何かを言いたげな雰囲気を沢山抱えているのがひしひしと伝わって来るのだ。
我が儘を言う方は、
「どれだけ私が会いたいって思っているのか分かってるの。」と、顔を合わせた途端にグチグチと文句を言うだけ言って、たった10分間だけでも、直接顔を見ながら文句が言いたいと、会社帰りの俺を待ち伏せしてたりする自由奔放な明るさを取り戻した彼女。
一方の彼女は、会いたさを前面に出したメールはくれるものの、二人の物理的距離がそこそこ離れていると言う現実に加えて、彼女自身の健康面の不安定さがあり、なかなか会うまでの段取りや調整が着け難いのが現実的な問題になっている。
先行の我が儘彼女とは、かれこれ6年余りの付き合いで、かなりの濃厚濃密なぐちゃぐちゃな関係ではあったのだが、このコロナ騒ぎで、俺の会社での立場が落ち着いたサラリーマン暮らしになってしまったが為に、濃厚濃密な関係が維持出来なくなり、会う時間が激減してしまった。
それまでは、出張族だった俺の出張にくっついて来たり、俺の通勤経路に住居を構えたりと、正に自由奔放に俺の生活に入り込んで、「楽しく生きる手伝いだったら、俺が出来る事は何でもして上げる。」なんて、言ってしまった俺を後悔させる程に、今では明るく生き生きした生活を送っている。
そう、彼女はもう自分の人生を自分の足で楽しく歩いているのだ。
彼女に取って俺は全く必要のない男に成り下がっている筈なのだ。
俺に取っても彼女は、不倫がバレるリスクを背負ってまで関係を継続しなければならない程の理由は無くなっているのだ。
老い先短い俺の人生。
ここに来てまた再び、新たに俺に会いたいと思ってくれている彼女が現れてしまった。
その為にも、現役の彼女とは綺麗?にお別れをしなくてはならないのだ。
好き勝手な我が儘が言い放題の、現彼女に対して、相当な嫉妬心をめらめらと燃やしている次彼女。
だが、それを決して明らかな文章しては言い表さず、あくまでも静観の立場で見守る立場を維持しようとしている。
自由に身動きが出来ない自分の健康面を悔やんで、泣き声だけの電話を掛けてくる意地らしさに俺はどう応えたら言いのだろうか。
我が儘言い放題を許して来てしまった付き合い方が間違っていたとは思いたくはないが、ここに来て、それを断ち切れない俺の弱さが計算に入っていなかった、己の弱さが悔やまれてならない。
次彼女の境遇が見えているだけに、現彼女の裕福さや社会的立場の高さの優位性が羨ましくてならないのだ。
次彼女を助けて上げたい。
これは勿論綺麗事であって、新しい可愛い彼女とあれやこれやといやらし事がしたいのが本音なのだが、
現実問題としては、現彼女の我が儘は何一つ遠慮する事のない付き合い方をしているので、俺の下半身は彼女の支配下からは逃れてはいないのだ。