toshimichanの日記

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残念だよ

何も起こらなかった。
そこからは、何も始まらなかったし、
何も生まれなかった。

幾つもの夜に数百に及ぶ
DMを送り合い文字で語り合った。

最初、俺はただ彼女を励ましたかっただけだったんだ。

お互いに、得体の知れない者同士が、このnoteで他愛のない感想のメッセージを残し、twitterのDMで触れ合う様になったんだ。

ただそれだけの話しなんだ。



彼女は傷付いてた。
一つは、一般的には有りがちで、世間的にはありふれた、さほど珍しくもない事案なんだけど、
それも本人にしてみれば、人生の区切りとしては辛く苦しく大変な出来事。

勿論、助けられるなんて思ってもいなかった。
ほんの少しでも彼女と向き合って励ませられれば良かったんだ。

けれど、彼女の抱えている苦しみは、そんな簡単で単純な話しではなかった。
世間で良くある家族との別れだけには留まらずに、そこから派生した身体的にも精神的にも追い詰められた痛みを抱えていたのだった。

こんな安易な場所での文字のやり取りでは何一つ、どんな些細な痛みにさえも触れる事なんか出来やしなかったんだ。




少しでも力になって上げたい。
そんな思いを抱いてしまう俺の悪い性格。

数年前にそんな俺の、たちの悪い性格から派生してしまっている、また別の彼女、ひろみと言う存在がその時点でもまだ身近に存在していたんだ。

俺は、その時点で世間一般的に言う所の不倫と言う悪事をしていたんだ。

言わば三人目の相手になってしまうかも知れない彼女。

いくら据え膳と言えども、そんな彼女に手を出す資格なんかが、その時点での俺にある分けがなかった。

ひろみとは、もう七年にも及ぶ付き合いになっていた。

そう、もう既に他人と言う雰囲気ではなかったんだ。

別れようとは、何度も何度もして来たんだ。
その度毎に、深まってしまう関係。
過激さをます身体のやり取り。

ひろみとは、当たり前のセックスなんてものは付き合い始めのほんの数ヶ月で飽きてしまい、ひろみの性癖にズブズブと沈み込んでしまっていたんだ。

ひろみは性的支配を望んでいたのだった。

痛みに因って快楽を得る、特異体質とでも言うのだろうか。

傷付けられる事に喜びを感じ、痛みを快感として受け入れられる特殊な女性。

それが、エスカレートして行くと、、、


ひろみの身体には、幾つもの傷跡が残されている。

その一つ一つの全ては、俺に愛された証だと、誇らしげに、嬉しそうに笑顔で俺の目の前に晒している彼女の幸せそうな姿は、俺が彼女から遠ざかる事を見事に防いでいたんだ。

安易には別れられない関係にまで傷付けてしまってたんだ。

しかし、そんな危険で濃厚な肉体関係を持ち続けられていたのは、俺の仕事が地方を渡り歩く出張族だったからこそだった。

月の三分一は、国内の地方への出張で家には帰らない生活をしていたんだ。
このコロナ騒ぎになる前までは、、、

生活が激変してしまった。

当然ながら、都内のコロナ渦から地方へ出張に行くなんて仕事が成立する分けもなく、
職種の変更や配置替え、余剰人員は切り捨てられた。

俺は末端の製造工場へと左遷され、自由に動き回れる時間が無くなってしまい、
当然、ひろみとの時間もほとんど作れなくなってしまっていた。

過激な肉体関係が結べなくなってしまったんだ。



丁度良い機会だったのかも知れない。

月に一度、朝から夕方までしか逢えない関係なんて、それまでの休日を挟んだホテルでの時間を気にしないで好き勝手にやり捲っていた二人からしてみれば、なんの気晴らしにもならなかった。

会えば不満がどんどんと募るデート。

デートがしたいんじゃない!

そこは不倫関係でしかなかったんだ。




ひろみは確実に俺の彼女だった。
俺の女だったんだ。




そんな思い出だらけのひろみと別れた。


だからと言って、直ぐに新しい彼女になんて心を傾ける事なんて、
そんな器用な真似を俺が出来る分けがなかったんだ。


大分、待たせてしまったんだ。

今更、連絡を取って、どうにかなる分けもなく、

結局は、
何も起こらなかった。
そこからは、何も始まらなかったし、
何も生まれなかったんだ。




言葉が出し難くて、人と話す事が難しいと言っていたけど、
そんな事は、気を遣わなくて良い相手だったら、どうにだって出来る筈だった。
無理に話しをする必要なんてないんだし、ただ側にいて、寄り添って目を合わせてさえいれば、気持ちなんて少しは通じ合えるんだって思ってた。

際限のない性欲だって、そんな女性とは何人かと付き合って来たんだから、そんな事では驚きもしなければ戸惑いもしやしない。
求めているモノは出来るだけして上げられる様に努力をするし、満足してくれるように頑張れたのにな。


残念。
しか残らない結末だったよ。