toshimichanの日記

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斬文(危) 3

ベッドで膝を交えて見詰め合っていた。

彼女の視線には、
何の迷いも躊躇いも感じられなかった。

純粋に、真っ直ぐに俺の眼を見詰めて、
迷いのない願いを訴えていた。



「こんな歳になってから、
こんな女にされちゃうなんて、
思ってもみなかったよ。」

見るからに痛々しく赤紫色に腫れ上がった土手が、俺自身の残虐さを物語っているかの様で、己の恐ろしさに身が震えた。

その土手下の双曲部分からは、それよりも更に濃い黒ずんだ紫色をした二枚のローストビーフを重ね合わせたかの様な肉片の重なりからは、真っ赤な鮮血がトロリと流れ出していた。

そろそろ始まる頃だとは思っていたが、どうやら二日か三日くらい早く来てしまったようだった。

今日のプレーは生理日を早める程の刺激を子宮には与えてはいなかったのだが、まあ、基本的には規則正しく訪れる体質ではない彼女なのだから、二日や三日の誤差は別に珍しい事でもないし、生理日だからと言って途中で止めたりもしなければ、手加減を加えたりもしやしない。

そこまでしなければ、俺色に染まるのを懇願するこの女を満足させ事など出来やしなくなってしまっているんだ。

ここまでして尚もまだ、一時の冷静さを保ちながら、更なる被虐を求めて来るこの女の恐ろしく深い性欲の根源は、この少女らしさを纏った可愛いらしい女の、いったい何処にあるのだろうか。

恐らく、この平静を保っているかの様な表情をしながら、俺へのコメントをしている瞬間でさえ、彼女の感じている激痛は半端ないモノなんだろうと俺には想像すら着かない。


度重なる殴打に因って内出血を伴った打疱傷は、多分、もう感覚が失われてしまっているのだろうに。

流れ出した鮮血を洗い流すかの様に、そのローストビーフ状の肉片からは、チョロチョロと泉の様な清流が沸き出している。

この時点での失禁は、性的な興奮による潮吹きではなくて感覚が消失してしまった、弛みからの漏れに違いなかった。

俺はそこまで彼女を追い詰めてしまっていた。

そんな状態になり果てていながら尚もまだ、それ以上の被虐を願っているなんて、




この限界を知らぬ連続した野獣の様な激しいイキ様は、その丸みを帯びた柔らかく白い肌の下に隠された、確かに鍛えられた筋肉の躍動に寄って起こされている。

それは、度重なるこの果てしない性的な筋トレに因って鍛え抜かれてしまった、通常の生活では使わない部分の筋肉を快楽の果ての中で無意識に酷使し続けている妖艶美なのだ。

鼠径部に流星の尾の様に浮き上がる腱反射。

柔らかく厚みのある真っ白な曲面をした内腿を盛り上げて浮き出でくる力強い腱の盛り上がりは、その付け根にある彼女の彼女たる中心部が巻き起こしている刹那の叫びの様に猛々しいのだ。



やり盛りの女性が、その性欲に従って解放され、己の体力の限界を越えながらも快楽に溺れる事を望んで俺にそれを求める様になってしまっていた。

そんな事を繰り返し繰り返し続けていれば、意識しなくても、自然と鍛えられて行く不自然な部分の筋肉や腱。

それが妖艶な女の深みを増して、美しい肉体美を作り上げてしまった。






二人で一緒に過ごす時間を、
なるべく沢山にして欲しいと
望まれていた。

そこで安らぎや喜びの時間を共に過ごし、
思い出や絆を深めたいと、
話していた。

きっと、多分、俺は、

愛されていたのだと思う。


愛されてはいけない立場の俺が、
求められてしまっていた。

応じてはいけない欲望に、
応えてしまっていた。

深まる関係、育まれる感情。
求められる独占、
与えていた淋しさ。

一人で過ごしていた時間の分だけ
積み重ね、塊になっていた淋しさ。

会う度毎に、
濃密に、濃厚に、
ほぐしては、溶かして、
埋め合わせをしていた。

固く凝り固まった不満が、
女の性を滾らせては、
爆発させていた。

求められる激しさ。

鬱積した女としての欲望。






貴方ににしあわせにしてもらってたら、
失った時に地獄を見ることになるので、
私は自分で自分を幸せにできるように、
強くならなきゃダメだよね。

身体的な痛みでは決して俺には見せはしない、痛みを感じている表情が辛かった。


覚悟が出来たんだよね?



次の言葉を睫毛が遮り
声には出せなかった。

何を言ったとしても
その言葉は真実で


この距離で何を語って
言い現したとしても
全ての気持ちがそのまま
届いてしまう。

嘘は嘘のまま嘘として
バレバレで
それが真実で
誤魔化せやしない。


今、この時間が私に取っては、幸せの全てなのね。
この時間の為に、私は生きてるの。


始める前には、あれ程綺麗だった彼女の体をこんなになるまで、俺は傷付けてしまった。

壊れた性癖が作り出す地獄絵図から目が覚めた時に感じる、二人の至福の瞬間に、そんな事を言われてしまっては、
俺はいつ迄たっても、ここからは、逃げられやしないんだ。


美しく鍛え上げられた妖艶美
それとは裏腹な、幼げな表情で見詰めてくる彼女の、その見事なアンバランスさは、それを手の内に抱いてしまった男としては、手離せる分けはなかったんだ。