toshimichanの日記

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魑魅魍魎

こんな男になりたかった訳ではない。
さりとて、大きな岐路に立たされて迷った覚えもない。
選ぶして選んだ道を辿って歩いて来たら、こんな男に成り下がってしまっていた。
何処でどんな選択を大きく間違った訳でもなく、幾つもの小さな岐路を少しずつ歪めてしまっただけなのに、今となっては、こんなにも惨めでみっともなく、取り返しが着かない男に成り下がってしまっている。

普通の定義などが俺に分かろう筈もない。
比較した所で、標準的なサンプルなのかどうかも判断が下せずに、それとの比較が正しいのかさえも定かではない。
ただ、同じではなく、異質である自覚が出来るだけで、自分の立ち位置がそれとは明らかに違う場所に居る事を身を持って知らされるだけだ。


一方的な礼儀を尽くそう。
また一つ、選ぶして出された答えに従う我が身が悲しいけれど、他の手段が見付けられない以上は、これが一応の正しい判断であると信じよう。
それが、現時点に於けるベストな選択肢なのだと。

女が弱さを晒らけ出し、秘密を隠さずに露出して望まれてしまえば、それに付き合うのは当然の振る舞いであり、礼儀。
いささか一方的でエゴなのかもしれない。
例えそれが己の主義に反していようとも、出来うる限りの知恵と勇気を持って対処するべきであろう。
増してや、その対象者が深く強く結ばれたいと願っている女性であるならば、尚更に情熱を注いで向き合うべきは必然な成り行きであると信じられる。

そして俺は化物になった。
化物に成り下がった。
美しく見事なまでの肢体に翻弄され、狂喜の中に散りばめられた苦痛に垣間見られる、えも言われね快楽の表情はこの女の内に秘められた本性の具現化なのだと。
それを導き出せる手加減と際どいギリギリの技は預けられた者の義務と責任なのだと確信している。
ただ、それが本当に望まれたからと言って許される残虐さではないのだと、常に精神が苛まれ、蝕んでいる自覚が苦しいのだ。

真っ赤に焼けた鋼は皮膚だけではなく、その皮下組織をも破壊して、その白く滑らかな曲線を醸す膨らみをいびつに歪め、僅かに不自然な揺らぎへと治癒されてしまう。


竹串は貫き辛く、中央付近の凝りを貫通せしめる為には、鷲掴みの握力の加減に考慮をしている余裕がなくなってしまう。
そこを通過出来たとしても、掴む力を緩める事が出来ず、貫き通すには、尚も酷くひしゃげさせ鷲掴みながら、こじる様に突き刺して行かなければならない。
その手応えは、とても愛する女の象徴的な部位に与えるべき愛撫などでは、絶対にない。
残される手触りには、その柔らかな肉中を突き進む異物の残虐な感触が指先からは決して消えはしないのだ。

覚悟は苦痛に固められた表情が、ふと安らぎを得て緩められ、我慢し抜いた隙に生まれる一瞬にして極上の笑顔に収束する。
その笑顔に出逢うべくして、行う残忍な仕打ちは彼女の肉体を破壊し、俺の精神を同時に、同様に蝕んで行く。

刺し口が竹串に引っ張られ、窪んだままに歪められひしゃげられている。
血だらけの膨らみを、誇らしげに突き出して誇示する姿には、満足までにはまだ程遠く、残された体力で自らを表現でき得るのであるならば、行為はまだ半ばと言えよう。
この程度の残虐な拷問位では、へこたれぬ体力と忍耐力を彼女は有していた。

その女性特有の痛みに対する耐性とそれを受け入れて味わいながら、無限の快楽に変換して痛覚を喜びと誇りに等価交換する能力は意識を失う寸前にまで追い詰めても、ふと自然な微笑みを浮かべられる淵をさ迷えるのである。

それは、長い年月を経てまで続けられる様な拷問ではなかった。
一つのステージで変化をもたらす体型形状変化は傷口が治癒した後でもはっきりと痕跡が標され、明らかな歪みが残像として象られてしまう。
それは同じ責めを同じ部位に与えれば尚更に歪み変形を重ねて行くものである。

例えば、それが膨らみの先端部であるとしよう。
元々は、そこには豆粒の様な、粘膜質の突起物があったはず。
それは、針で刺され、糸を通され、釘を打たれ、低周波を流され、お灸を据えられ、ペンチで潰された。
カミソリで裂かれて、四つに切り開かれた。
その一つ一つをもぎ取り、引きちぎった。
今では凸凹の汚い皮膚に覆われた醜い傷痕が残っているだけである。



それはどれ一つとっても激痛であったはずなのだが、どの激痛にも耐え抜いて誇らしげにその部位を晒しながら感謝をされた。
一回一回の治癒を待ち切れずに、まだ傷口が塞がらないままの患部にまた再び拷問を加え、激痛を与えた。

それが、彼女に取って俺の存在価値であり、性欲のはけ口。
しかしながら、愛していると自覚し、愛おしさをい抱いている愛人の美しくも見事な躰に、愛撫などとは絶対に呼ぶ事が出来ない、荒々しい加虐や残忍な拷問を課す俺の心は、その時点で正常だと言えるのかどうか。
そもそもその愛とやらが心に居るのかどうかも疑問である。
恐らく、彼女の性的な魅力を現す躰の部位には一生残るであろう傷跡が生々しく刻まれ、新たな出逢いや会瀬には、確実に邪魔になり、後悔に苛まれるであろう。
その脳裏に浮かぶであろう俺の姿は、この世のモノとは思えない形相で彼女を襲う化物として、彼女の記憶に留まり続けるのであろう。