toshimichanの日記

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美紗絵との出会い

はっきり言って、めんどくさいです。
特に意味もなくストーリーもありません。
ふと思い出した過去の自分の記憶を繋ぎ合わせて、ただ長いだけの駄文にした自分史ですので、うかつに読んでしまうと不快に感じるかも知れませんが、責任は取れませんので宜しく。





いつからか俺は、一つ一つの言葉を丁寧に選ばなくなってしまっていたんだ。
そんな事にふと気付いたのは同居を始めてから一週間くらい経った頃だった。





高嶺の花と言えば、手が届かなくても肉眼では見る事のできる、高い峰に咲き誇っている美しい花をただ指を咥えて眺めていると言う状況を指す言葉だが、
事、美紗絵に関しては、俺との距離が僅か数メートル。
ほんの目と鼻の先の近さで、それこそ手を伸ばせば届く距離にいて毎日毎日見事に咲き誇りながら働いている姿を愛でていられる近さに位置していたんだが、高嶺の花とは、そんな物理的な距離を比喩したものではなく、
あくまでも、立場環境、精神的な距離を絶望視している己の立ち位置を揶揄している言葉なんだとつくづく思い知らされていた。


それまでの俺は、特に優しく振る舞おうとなんてしていなかった。

切っ掛けを作ろうとしていた分けでもなければ、別に気を使ってる積もりもなかったし、特に丁寧に接して気を引こうとした分けでもなかった。

彼女に対しての普通?と言う接し方が、とんな風に相い対したら正解なのかを思い倦(あぐ)んでいる内に、仕事上で朝晩の挨拶以外での会話を交わさなければならないような関係に陥ってしまったのだった。

彼女は原子力事業部と言うセクションで、部長クラスのお偉いさんの秘書的な立場にあって、公官庁への手続きや許可証、申請書類など堅苦しくも面倒臭い事務処理をこなす仕事をしていて、
一方、俺はと言えば、基本的には機械設計部動機設計課に席を置くやさぐれた愚連隊の一人だった。

そんな俺が、幾つか抱えていた仕事の一つが片付いたタイミングで、立ち上がってしまった新規事業のプロジェクトチームとして運悪く引き込まれてしまったんだ。


放射性を帯びた発電所内の細かいゴミや埃等の、いわゆる放射性廃棄物をペレット状に固める処理施設を考案し、それを具体的な機械処理設備として設置した場合の機械類の性能や施設内での配置やそのコストや安全性をも踏まえた上で、競争入札に掛けるためのプロジェクトチームの一員として、
俄(にわか)に駆り出された機械担当要員でしかなかったんだ。
(この説明って、要るのか?)

大手機械メーカーの巨大な撹拌装置を原子力発電所仕様に改造する為には、その撹拌装置の詳細な性能を表した仕様書や、外観を表した全体図いわゆる設計図がどうしても必要となってしまい、
そのメーカーさんから、社内極秘機密である重要な図面を手に入れなければならなくなり、そのやり取り?駆け引き?折衝を彼女にお願いしなければならなくなってしまったのだ。

その他にも、放射性を帯びたゴミや塵のハンドリング方法や機械で撹拌している際の機密のシールド性能を予測して作業室内での被爆量を算出しなければ安全性の面で官庁の許可が得られない為に、彼女と事細かな打ち合わせがどうしても必要になってしまったのだった。




立場上で言えば、放射線に関してはまるっきりど素人だった俺が実働部隊として具体的な計画案を立案しなければならない立場なので、
俺の方が質問をして、彼女がその答えとなる規定値を教えてくれて、その範囲内に納まる機械になる様に設計変更をしていかなければならないので、
彼女が導き出した数値が、簡単な設計変更くらいではとても達成し切れない数値だった場合には、彼女に対して規定数値の譲歩を求めなければならなかったり、
或いは、数値を是とする根拠や理論を尋ねたりもしなければならなかった。

つまりは、彼女の出す条件に対して俺がぶつくさと文句を言いながら食い下がる様な険悪な関係が作り上げられたのだった。

「今はまだ現物の機械が出来上がっている分けではないので、図面上から推測した設計上の予想数値に対して細かく合否判定をされてしまっては、これから叩き台としての全体像を計画して行かなければならない足場を壊そうとしているだけの一方的な攻撃論者でしかないじゃないですか。」

確かに、百人が百人全員、美人だと言うであろう美女なのは認めざるを得ない美貌ではある。
が、しかし、それが故にその意見も正しく美しい分けではないんだ。
美人だからと言って正当化されてはいけないんだ。
と、何やら歪んだ正義感が俺を奮い立たせていた。

「計画スタート時点の発想が現実にそぐわない案件を見て見ぬふりをして野放しにて容認する分けにはいかない立場に私はいるのね。
この時点で規定内の数値目標に達っせられないと分かっていながら、現状の案件を進捗させる分けには行かないわよ。」


そもそも美紗絵は社内の女性社員の半数以上を取り纏めている、いわゆるボス的な?ある意味に於いてはスケ番と言っても過言ではない立場の女性だったので、気が強く勝ち気な性格をした女性だった。

その勝ち気さは、その美貌にも如実に現れていて、俺と意見が食い違った時に、キッ!と俺を睨み付けるその眼光の鋭さと言ったら、背筋に氷柱を射し込まれかの様な旋律が走り、その並み外れた美しさに身動きが取れなくなってしまうほどだった。



俺は、その他にも石油精製プラントの新規立ち上げや大手製薬会社の工場を郊外へ移設する計画。
船荷の上げ降ろしをする、いわゆるキリンの改良計画を発案しなければならなかったりと、幾つもの案件を抱えてしまっていて、家に帰る暇も惜しんで仕事をこなさなければならない立場に追い込まれていた。

そんな仕事の中の一つである、この原発の仕事は、客先が泣く子もだまる巨大な電力会社。
相手は国の規定であり、法規。
見逃しや手違い間違いは許されないし、何よりも敵は目に見えないし形のない放射能である。
そして、そんなプレッシャーを更に激しく助長させているのが、彼女だったんだ。


キックオフミーティングの時点から、俺の席の横に凛々しくきっちりと座って、未熟者の不慣れな仕事ぶりをしっかりと監視及び指導をさせて貰います。とばかりに威圧していたんだ。

それに比べて俺のコンディションときたら、家にも帰れずに、良くて駅前のカプセルホテル、並で応接室のソファー、最悪で貫徹の日々を過ごしていたために、下着やワイシャツの替えが底を尽いてしまって汗や体臭が気になっていたり、はたまた慢性的な睡眠不足の中、ただでさえ理解の範疇を越えた原子力などと言う敵に見舞われて思考能力がバグッてしまっていたので、現状を把握せずに会議に臨んでいたんだ。





飾りっけのない会社のつまらない制服のはずなのに、その素朴なデザインでさえその身が纏えば、その見事なまでの凹凸が女性らしい丸みを帯びた曲線を描き、さらに一際目立つ高身長がその際立った女性美を威圧的に放っていた。
美しく可憐であるが故に、他の者を寄せ付けさせない無垢な質感を持ったオーラを感じさせ、ある意味で人間離れしているとさえ俺は感じていた。



最初に、仕事の概要としての方向性を立案し、骨組みを纏めたの書類を彼女に提示したんだ。

なんせ、相手はただならぬ妖力を発している美しき妖怪。
俺の意識の中で彼女の印象は最悪だったんだ。
もしかしたら言葉が通じないかも知れない。
いきなり目の前で書類をビリビリに破かれて、天に向かってバラ撒かれるかも知れない。
或いは、あの鋭い眼光が、実は一瞬にしてレーザービームと化して、手にした書類を焼き払ってしまうかも知れない。

現実離れしたあらゆる思考がぐるぐると頭の中を巡って、いざ彼女の目の前に立った俺は、頭の中にもやが掛かっているような感覚で手にしていた書類をかなり乱暴な差し出し方をしてしまったのだった。

「あらまっ?
初案にしては随分速く仕上げて来たのね。」

片手でバサバサっと突き出した書類を、わざわざ座っていた椅子から立ち上がって、一呼吸を置いてから受け取った彼女が俺の身なりを一瞥していた。

その時の俺は、見事な徹夜明けで髪はボサボサ、ワイシャツは皺だらけでスラックスの折り目は無くなっていて、見るからに仕事のできないダメダメな浮浪者風情を醸し出していたのだった。

もしかして俺、臭ってるかも。
一瞬脳裏を横切ったのだが、

「早速、直ぐに目を通して確認をしますので、ここに座って待っていて貰えますか。」

と、事もあろうか、自分が今座っていた椅子の直ぐ横にある椅子をポンポンと叩いて、そこに座る様にと指示をしてきたのだった。

あっ、いやいや、あんな近接距離に、今のこの状態の俺が座ったらば確実に俺の体臭が彼女の鼻腔を不快にしてしまうのは目に見えていた。
只でさえ、お伺いを立てなければならない弱い立場なのに、この不快な体臭を振り撒いて機嫌を損ねる様な真似は絶好に避けなければならなかった。

「ねえ、速くここに座って。
ここの、この意味って、どうゆう事なのかちゃんと説明してくれる。」

「あっ、いや、その、、、」

明らかな高圧的な態度に俺は萎縮してしまっていた。

明らかにご機嫌は斜めのご様子。
これ以上怒らせる分けにはいかないと思い、一か八かの勝負に出てみた。

この自社ビル内には1500人以上の老若男女が働いていて、その中には定年間近の汚いオッチャン達も数多く生息している。
全てのオッチャンが臭く汚い分けではないが、中には、何故そんな匂いのコロン?整髪料を着けてるの?
側に居て思わず呼吸を止めたくなるような悪臭を放っている輩がいるのだ。

俺は知っていた。
彼女の直属の上司である○○部長補佐は、今の俺よりも遥かに不快感を覚える悪臭を放っている事を。
○○部長補佐の性(たち)が悪い所は、その年齢から来る加齢臭に加えて、それを誤魔化そうとしているのか、何やら別の臭いのする化粧品をミックスしているようで、傍で濃厚な臭いを浴びてしまったら、己の生存本能からなのか、一瞬呼吸が止まり異物を拒否するかの如く咳き込んでしまうレベルの体臭を醸しているのだ。

それに比べたら、俺の体臭などは、まだ若い上に、変に体臭を誤魔化そうとしてフレグランスとかを着けてはいないし、不潔とは言ってもせいぜい1日か2日くらい汗を洗い流していない程度なので、あの咳き込んでしまう体臭に比べたらかわいいものだろう。

俺は意を決して彼女のすぐ隣に用意された椅子に腰を降ろした。

直ぐ様彼女は、手にした書類に指を指しながら俺の目の前に差し出して頬を接近させて来た。

とりあえず、彼女の疑問としている部分を即座に把握し、その問題を明瞭的確に解き明かし説明しなければならなかった為に、俺は自分が体臭を発しているかも知れない事を忘れて、事もあろうか更に体を近付けて説明をしてしまっていたんだ。

最初彼女は、書類に視線を向けて俺の説明を顔を並べて聞いていたのだが、俺が説明している途中で更に別の疑問が浮かんでしまうらしく、その度毎に、その距離で俺の方にクルッと顔を向けてしまうので、やたらドアップで彼女の御尊顔を拝してしまい、
余りにもの、その美しさに思考が止まってしまい、説明がたどたどしくなってしまっていたんだ。

ここで彼女を納得させられなければ、また新たに骨を組み直さなければならなくなってしまう。
今後の工程に支障が出てしまうので、俺は理路整然と分かりやすく説明をしなくてはならなかったんだ。

是が非でも、ここで彼女にこの立案を了承して貰わなければならなかったので、バグっている思考回路に渇を入れ、俺は彼女の新たに湧いてくる疑問に対しても、丁寧に説明を続けていた。



すると、いつの間にか彼女の視線は、俺が一生懸命に説明をしている書類にではなく、クルッと顔をこちらに向けたままで俺の話しを聞いている事に気が付いた。

「ん?おっ、聞いてますか?」

ニコニコっする彼女。

「うん、分かった、これで大丈夫だよ。
この案で進めてくれる。」

彼女が浮かべた笑顔の意味が掴めずに、俺はスッと彼女から距離を取った。

「もうちょっと話しを詰めたいので、今日の7時に下のセピア(喫茶店)に来てくれる。
その時にこれからの方針を提案するから。」

「あっ、はい分かりました。」



えっ、「来てくれる。」なんなんだよ。
この書類で許可が通るのだったら、この案件に沿って仕事を少しでも進めたいのにな。
下の喫茶店に仕事終わりの夜7時にわざわざ呼び出されてしまうって言うのはどうゆう事なんだろうか?
もしかして、この書類の出来が余りにも酷いので、他の社員がいる場所で問い質したり、叱ったりが気の毒だから、人目のない他の場所を選んだのではないのか。


いやいや、これで大丈夫とまで言っていたのだから心配する必要はないはずなんだ。
一区切りと言えば一区切りなんだから、仕事が進められないのならば、今日は早めにカプセルホテルに行って、たらふく美味しいご飯を食べて、ゆっくり眠りたいのにな。
でも、ある意味ではプライベートな時間を割いてまで、この俺に対して特別な何かを伝えようとしているから、わざわざ呼び出すのだろうから。

その後は、ありとあらゆる不吉な事ばかりが頭を巡り、全く仕事が進まなかった。




ちょっと安っぽげな暇そうな喫茶店の割には、豊潤な薫り高いホットコーヒーがテーブルに運ばれて来て、
それを切っ掛けに堰を切った様に彼女が話の口火を切った。


「あのね、提案って言うか、お願いって言うか、お誘いをするために今日はここに来て頂いたのね。」

ん?ん?なんだ、お願いってなんなんだ?

キリッとした眼差しの中に、どことなくねっとりした妖艶な色気が混じっていて、迂闊にもしっかりと視線を合わせてしまった俺の思考をあらぬ方向へと迷走させた挙げ句に完全停止させてしまったのだった。

俺は返す言葉をさんざん考えた挙げ句、
「えっと、俺としては、なる早でこの用事をすませてシャワーを浴びて、しっかり食べたた後にゆっくりと寝たいって思ってるんですけど、その用件ってのは手間が掛かりますか?」

まぬけな返しをしている事は十分に分かっていた。
事実、俺は連日のもはや残業とは言えない社内での泊まり込み業務にドップリと疲れ果てていて、ともすれば、その場で寝てしまっても良いと言われれば、喫茶店のこの小さいテーブルに突っ伏して寝てしまえるだろうなとさえ感じていた。



V字にザックリと開いた胸元の衿が、押さえ着けられて逃げ場を失っているおっぱいが自由を求めて張り出し、綺麗に湾曲した弧面を描いている。
ドキマギとしながらも彼女から視線を外そうにも、外した視線のやり場に困っていると、

「ここから歩いて10分くらいの所に私の住んでいるマンションがあるのですが、
もし良かったらなんですけれど、私の家でシャワーとかお風呂を使いませんか?
だいぶ家には帰っていらっしゃらない様子なので、不躾ながら、そんな提案を申しましたの。
浴槽も大きくて、気持ち良く手足を伸ばして入れるのできっとリラックスできると思うのですが、どうでしょうか?」

釘付けにされてしまっている視界の下には、白くてまん丸の膨らみが目映く輝いているのがきっちりと映し出されてしまっている。
前髪が瞬きをした睫毛に当たって揺れ動く様がどちゃくそ可愛い過ぎて、今、何を提案されているのかを考える思考力がなくなっていた。

「ん?」
5秒くらいの間を空けただろうか。
「、、、そうだね。」と
話しの内容を理解せずに俺は応えてしまっていた。

相変わらず視線はロックオンされたままで
「わっ、本当に来てくれるの。」
突然に、彼女の口調が崩れて、理解不能な明るい笑顔が零れた。
微妙な親密感が込められた雰囲気に変化した。

テーブルに乗せていた俺の汚れた右手が、暖かい彼女の白くて細い両手に包み込まれ、グイッと持ち上げられてシェイクされている。

「それじゃ、こんな所で無駄な時間を過ごしているのはもったいないから、速く帰りましょ。」

帰りましょの言葉でやっと少し我を取り戻した俺は、彼女の言った言葉の意味を咀嚼し始められたのだった。

「えっ、えっ、えっ?」
頭の中では、文章としての意味は分かっている様な気がしていた。
が、その文章の指し示している、この行動の行く先はと言えば、全く現実としてはあり得ない行動を取っているのだとは理解できてはいなかった。


右手はしっかりと握られたままで、俺は彼女にグイグイと引っ張られるがままに後を歩いてしまっていた。

もしかして俺は拉致られているのか?



交互に動く足運びに連れて、フワリフワリとリズミカルに流れるスカートの裾からは、
目に目映い鮮やかな光りを放つお洒落なパンプスから、艶やかにすらりとのび上がるくるぶし、そして決して細いだけではなく、しっかりとした丸みを帯びた、セクシーなふくらはぎ。
なんという健康的な芸術美なのだろうか。

今、半ば強引に手を引かれ、連れ去られている我が身の行方を心配しなければならない状況にも関わらずに俺は、
この美しいサキュバスの魔力に墜とされてしまって、我が身に襲い掛かっている罠の恐ろしさに気付く由もなかった。