toshimichanの日記

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孕みたいよ。

全裸ながら凛とした佇まいで

目の前に立つ彼女は、

その決意を露に示す眼差しを

真っ直ぐに俺に向けて言った。

 


「貴方の赤ちゃんが欲しい」

と、

 


両手をお腹に当て子宮からの

叫びに従う様な聲が

俺の心に突き刺さった。

 


禁断の決意が女の性と業で

結実して剥き出しになる。

 


俺は戸惑いや驚きよりも、

抱いてはいけない歓びを、

下腹部に向けていた。

 


それは棄てられる身の覚悟。

 


俺の証をその子宮に宿し、

愛情の矛先を我が子に向ける。

 


認知は要らないと言い、

俺との縁も絶つと言い放つ。

 


目に見えぬ血飛沫が、

両手に抑えられた下腹部から

噴き出して俺の胸ぐらを

真っ赤に染め上げる。

 


俺はその膨らんで行く腹を

愛でる事が赦されない。

 


それが贖罪だと言うのだろうか。

 


それが彼女の

このグズに対する

復讐なのだろうか。

 


復讐の結末はいったい

何処に終息するのだろう。

 


母と子は復讐の為に生きるのか。

 


この人生の中の一瞬に、

宿す命を生きる糧にすると

言うのだろうか。

 


それが本当の彼女の望み

なのだろうか。

 


答えに目を背ける程

俺は腐ってはいない筈。

 


もう数千を超す程に思いを遂げた

愛着のあるいとおしい体は、

確かな実体を持って

手の届く目の前にある事実。

 


そこにはまだ空っぽの腹が

息ずいているだけで、

その中では、

まだ何も始まってはいない。

 


始めてはならない。

 


それは今までも、

これからも、

何も変わらない。

 


禁断関係の基本である。

 


この均衡を保てなければ、

この世界の全てが

失われるだけである。