toshimichanの日記

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風に揺れる

君の肩が小さく震えている。

 


その肩を包み込んだ

重たげな黒髪が、

緩やかな曲線を揺らしながら

小刻みに煌めいて、

より一層、

儚げに見える横顔。

 


隠さずに、

拭いもしない雫の流れが

俺の罪の重さなのだろう。

 


それとも、

自分に向けた悔しさ

言葉にしない言い訳を

捨てているのかな

 


こんな時には、

いつもなら

躊躇わずに抱き締めて

キスをしていた。

 


振り払われる手の平。

ドキッとした不安に

消え去る言葉。

 

 

 

 


新月の夜に

月を探しに屋上で、

そこにはない空を見つめてた。

それでも笑顔は真実で、

抱いていた暖かさは、

腕に鼓動を伝えてくれた。

 


うなじの生え際に唇を寄せて、

「好きだよ。」

その瞬間に預けられる身体が

「知ってるよ。」

 

 

 

 

 

 

夜空がこんなに広かったなんて

言い訳の隠し場所が見付からない。

君を連れて行かれる星が

俺には見つけられない。

 


今始めた事を

ここで終わらさなければ、

また、明日のこの空には、

薄く鋭い月が俺を刺すから

この夜を選んだ。

 


言い訳や嘘、なぐさめや

真実さえも、本心でさえ

言葉にできない。

全ての俺の声が、

君に届かなくなった。

心の居場所が

もう

 

 

 

春の夜風が

君の泣き声を包み、

俺には運んでは来ない。

この風が隔てる優しさは、

残酷なまでに

一人と一人に分かつ。

 


君の涙の匂いが髪をすり抜け、

素直な覚悟に化けてはくれない。

止まった時間に瞳が

投げ付けて来る想いは、

数え切れない傷になる思い出

 

 

 

出逢う糸をどんな風に紡いで

自分の絵柄に仕上げたのか

使った糸の数だけ

色彩は濃くなるけれど

自分の描きたかった画調からは

遠ざかるよね。

だからと言って、

選ばなかった糸には

なりたくなかった。

 


俺が織り込んだ糸は、

染みの様に汚れていても、

それでも、

君の手で紡いだ俺なんだ。

 


七年間に描いた

この色合いには、

二人の足跡と消せない模様が

残された。

 

 

 

俺は、

ここで君の糸を千切るけど、

俺に残された君の風景は、

絶対に誰にも見せられない、

暖かく眩し過ぎる過去として、

きっと俺を支えてくれるんだ。

 


俺にはもう、

出逢う糸はないけれど

君のその手には、

まだ

数え切れない色彩が

残されているはずだから

もっと自由に織り込んで、

俺を消し去ればいい。

 

 

 

出ていれば

月くらいしか

見えない都会の夜空。

一等星の輝きさえも届かない、

天空の屋上。

 

 

 

このまま背を向け

視線を合わさず

さよならさえも聞かず

君の背中に

「さようなら。」と

 

 

 

 

 

 

声にはならかった。